「なんで日本でカングー?」とフランス人も不思議がる! カングーが日本で「誰からも嫌われない」理由をオーナーが考えてみた (2/2ページ)

家族全員に愛されるキャラクターがカングーの魅力

 一度試乗してみると、これはもう2代目しかない! と惚れ込んでしまった次第。妻が運転することも考えて、4速AT車に決定した。229万8000円ナリ。思えばこのプライスレンジで購入できるライバルは不在であった。シトロエンのC4ピカソが400万円超え、ステップワゴンが300万だったコトを考えると、その割安感たるや。ルノー・ジャポンの気が変わらぬうちに、そして明日はどっちだ? のフリーというコトで現金一括払い。無理をせずに手が届く憧れ。それが、カングー2であった。

 当時のカングーのラインアップは極めてシンプル。エンジンは1600ccガソリン一本、MTかATを選ぶだけである。グレードでヒエラルキーが決まるなんてのはなく、カングー好きは皆平等なのだ。もちろん、RS的なメーカーチューンが登場するコトもない。いまでこそカングー・ターボが出てるけれど、ミッドシップのカングー・ターボ2は一生出ないであろう。

 要するに、速さや豪華さは誰も求めていなかったのである。無塗装の樹脂バンパー人気はカングー・クルールからだが、コレもまた、日本におけるヨーロッパ車への憧れ的ベクトルからは考えられない流行だ。

 自分もご多分に漏れず、プラのホイールカバーを外してスチールホイールむき出しである。いまどき5穴15インチの鉄チンを愛するのは、日本のカングーファンくらいか。かのNASCARですら、昨年からセンターロックの16インチアルミに変わっているご時世である。

 ラインアップはシンプルだが、ボディカラーが標準で5種類が用意されているあたりがカングーらしい。さらにイマージュというグレードでは5色のメタリックがあり、ディーラーに家族ででかけてワイワイ選んだのを覚えている。

 結局、限定色の「ベージュカマルグ」に落ち着くのだが、その理由は、我が家の「トイプーと同じ色だから」。女性陣にとってボディカラーは大事であり、明るい内装色も好感触だった。なるほど、パパとは視点が違うのだ。

 パパの選択理由。それは仕事道具としての使い勝手と予算、そしてロマンの存在。妻は運転のしやすさと肩肘張らないオシャレ感。娘たちは「かわいい」と後部座席の乗り心地。

 家族全員に愛されるキャラクター。それが、カングーの魅力であることに間違いはなさそうだ。お迎えしてからは、以前にもまして家族揃ってのドライブが多くなった。ソロキャンがファミキャンになったのには驚かされたし、カングー・ジャンボリーでサイクリングしたのもいい思い出である。

 自分的には、車中泊仕様に仕立てたことが大きかった。いつか……と想いながら幾年月。実行に移さなかった背中を押してくれたのはカングーである。簡易的なベッドをDIYで作っただけだが、天気待ちの車中待機が格段に楽になった他、ロケが終わった暁に、地元のご飯屋さんで腹ごしらえでもして、道が空いたら帰ればいい……なんていう、いい意味での余裕ができたように思う。なんなら仮眠をとって翌朝を迎え、見知らぬ町を自転車でさまようのも楽しい。

 別に、車中泊やキャンプはカングーの特典ではない。だが、カングーで遊んだら面白そう! という謎のモチベーションが後押ししてくれたのは確かである。

 そして、カングーならではの魅力は、街の風景にも見事に溶け込んでしまうコトだと感じている。以前、特別仕様車の発表会を代官山の蔦屋で取材した風景がまぶたに焼き付いているのだ。それはそれはお似合いで、「そういうコトか」と腑に落ちた覚えがある。

 正真正銘の実用車である。乗用車としての快適性を犠牲にしていない。都会的な風景に溶け込む洗練さを持ち合わせている。そして、そのすべてを押し付けることなく共有してくれるキャラクター。それが、日本におけるカングー人気の源なのではと考えるのだが、いかがだろうか?


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