この記事をまとめると
■来年度よりトヨタ自動車の社長が豊田章男氏から佐藤恒治氏へと変わる
■佐藤氏は「電動化」「知能化」「多様化」の3つをクルマ作りのテーマとして掲げている
■トヨタによれば「EV市場の機は熟した」としている
社長交代でトヨタのBEV戦略はさらに加速する
トヨタは、これまで13年間に渡り会社を率いてきた豊田章男社長が会長となり、2023年4月1日付けで、新社長にこれまでチーフ・ブランディング・オフィサー兼レクサスインターナショナル・プレジデント兼Gazooレーシング・プレジデントの佐藤恒治氏が就くことを発表した。
本件ついて、トヨタ自社サイトのトヨタイムズのオンライン会見を行ったあと、リアルとオンラインのハイブリッド形式として2023年2月13日に記者会見を開いた。そのなかで、佐藤氏は「クルマづくりの3テーマ」として、「電動化」、「知能化」、そして「多様化」の3つを掲げている。
電動化については、グローバルで国や地域での社会情勢が違い、また市場性が違うことを加味して、今度も「マルチパスウェイ」という各種パワートレインを国や地域で最適化していくことから「ぶれない」と言い切った。その上で、グローバル市場のなかでは、EV需要が確実に増えており、「機が熟した今」と表現し、足もとでのEVラインアップの拡充を図り、さらに2026年量産を目途に次世代EVの開発に着手したことを明らかにした。最初のモデルはレクサスからの導入となる。この次世代EVを起点として、事業改革を加速していくという。
では、トヨタがいう、EV市場の「機は熟した」とは具体的にどういうことか?
まずは、2022年の世界新車販売の実績を見てみる。
EV販売台数では、トップがテスラで126万台、次いで中国のBYDが86万台、そしてアメリカのGMグループとなった。
一方で、乗用車全体ではトヨタが1048万台、これをドイツのフォルクスワーゲングループは826万台、そして韓国のヒョンデグループが684万台で追随している。
現時点で、2022年の世界全体での販売台数について、国際自動車工業連合会(OICA)は発表していないが、コロナ禍前の2019年は9123万台で、コロナ禍の初年である2020年は一気に7877万台まで落ち込み、2021年には8269万台となっている。
2022年は半導体不足による生産抑制があったので、8000万台後半あたりになるのではないだろうか。一方、2022年のEV世界総販売台数は726万台なので、自動車販売総数におけるシェアは10%弱といったところになりそうだ。
このように今は「EVの普及が本格化しそうな10%の壁を超えそう」という時期であり、また欧州では欧州グリーンディール政策の一環として、2035年には事実上、欧州域内ではEVまたは燃料電池車となる解釈の規制法の採択が、欧州議会で可決されている状況だ。
こうした欧州での急速なEVシフトの余波が、アメリカや中国、さらにインドにも及んでおり、トヨタとしては「マルチパスウェイ」を維持しながらも、それぞれの市場での動向を注視しながら、次世代EVの導入を進めることになるだろう。