2030年に自動運転レベル5のEVを1万台販売するのが目標
自動車を作るというのはAIスペシャリストだけでは難しいのも事実。そこでチューリングは、東京R&Dとの戦略的パートナーシップを締結している。東京R&Dといえば、スーパーGTなどで名前を聞いたことがあるかもしれない。現在、スバルのGT300マシンを走らせているRDスポーツもかつては東京R&D傘下だった。
東京R&Dは、GTマシンのベースともなった「ヴィーマック」というスポーツカーを開発製造したことがあり、さらにはバッテリー交換タイプのEVを実証実験用に製造したこともある。自動車メーカーのような大量生産は難しいが、むしろ少量生産において国内でも屈指のノウハウを持っているといっていい。
具体的には、チューリングと東京R&Dのパートナーシップにより2025年に100台の販売を目指す、最初のオリジナルカーの開発が進められる予定だ。スタイリングなどについてはまだ決まっていないというが、おそらく2シーターで価格は1000万円級、自動運転レベル2の仕様になるということだ。
テスラも最初はロータスエンジニアリングの協力を得て、ロータスの量産車アーキテクチャを利用したテスラ・ロードスターによって量産を開始している。テスラ超えを目指すチューリングがとった戦略が似ているように感じられるのも自然な話なのかもしれない。
2025年に販売する予定のオリジナルカーは、2023年の東京モーターショーあらためジャパンモビリティショーにてお披露目される予定。残された開発期間はわずかで、従来の自動車メーカー的なフローではプロトタイプを展示するのはほとんど無理と思える。
チューリングでは、設計にAIテクノロジーを導入することでスピードアップを図っているという。自動運転の制御だけでなく、AIによってクルマが作られる時代を切り開くというのも、同社の目指している世界である。
注目はセンサーという目にあたる部分よりもAIによる制御系(頭脳)を重視した自動運転を実現しようとしている点だ。
センサーは高価なLiDARではなく、非常に安価なカメラを使うという。センサーの性能ではなく、画像を深層学習で鍛えたAIによって解析することで、自分で判断して走れるクルマを生み出そうというのがチューリングの考える完全自動運転である。
現在の自動運転テクノロジーには欠かせないとされているダイナミックマップ(高精度3次元地図)がなくとも完全な自動運転が可能になるというのが同社の主張だ。
現時点で調達した資金は10億円単位であり、従来の自動車メーカーの開発予算が100億円単位であることを考えると非常にコンパクトな予算感でもある。古い常識に囚われていると無茶なプロジェクトにしか見えないかもしれないが、そうした常識を打ち破ったスタートアップは世界中に数多く存在する。
はたしてチューリングの挑戦は日本を救うイノベーションを生み出すのか、今後の動きから目が離せない。