燃費指向のTHS2搭載モデルもコーナリングは自在!
あらゆる場面で自由自在に姿勢コントロールできるのは驚きだ。メカニカルな4WDならこれまでもスポーツ4WDでは可能だったが、前後独立した2モーターを制御してスポーツ4WDの走行特性として仕上げるのは大変だったことだろう。ましてや2トンもある車重を低ミュー路で自在に走らせられるようにするのは困難だったはず。一般路試乗の際にエンジニア氏が「雪道の走りも最高なんですよ」と説明してくれたことがようやく理解できたのだ。
だが、まだ完璧というわけでもない。6速ATを制御するキックダウンスイッチがアクセルペダルに機械的に設置してあり、アクセル開度が大きい領域でのコントロール性を阻害している。また、前後に加えて左右の駆動力制御も欲しくなる。ブレーキベクタリングは効果的だが、作動するのは接地荷重が抜けるイン側タイヤなので、フィードバック制御では減速感を伴う強い介入が必要になる。VDIMオフ時はブレーキベクタリングは機能しないので、DRSに頼るために大きな転舵が必要で、高速コーナーではこれも機能しない。
こうした部分も今後どんどん改良され進化していくことが期待できる。
次に2.5リッターTHS2仕様に乗る。確かに動力性能面ではRSと格差が感じられ、加速場面での勢いは弱い。直線の最高速度は165km/hほどで、RSには大きく差を付けられる。
しかし、コーナーリング特性はRSとまったく遜色ない。トランスミッションの変速制御がないのでアクセルコントロールしやすく、まるで舗装路であるかのように良好なライントレース性を引き出せた。もちろんドリフトやゼロカウンター走行も可能で、THS2搭載モデルとしては前例のないほどスポーティな走りに仕上がっている。
19インチタイヤも試したが、じつは圧雪路でのグリップは19インチのほうが高かった。とくにトラクション性能に優れ、コーナー立ち上がりではRSに迫ることができる。
前後2モーターを個別に制御しつつ、減速時も加速時も前後アクスルが繋がっているかのように駆動力制御するのは簡単ではないはず。しかも最高速度域までそれを行っている。
雪道のテストコースを走ることで、クラウン・クロスオーバーの走りは、じつはスポーツカーを凌駕する高度な制御が実装されていることがわかったのだった。