この記事をまとめると
■海外のタクシー車両事情を解説
■インドではあえてベース車両と異なる車名にしているケースが多い
■販売への影響を考慮しているようだ
インドではタクシー車両とベース車両の名前が異なる!
インドにおいてスズキの現地子会社である“マルチ・スズキ・インディア社(以下マルチスズキ)”から、“ツアーS”というコンパクトセダンの新型が発売になったことが一部で話題となっている。このツアーSは、インドにおいてスイフトをベースとしたコンパクトセダン“ディザイア”をベースに、タクシー(インドではおもにライドシェア車両として)車両向けに装備などが簡素化されたモデルとなる。
マルチ・スズキではツアーS以外にも、わかりやすくいえば日本での軽キャブオーバーバンのような存在のEエコベースのツアーV、コンパクトMPV(多目的車)となるエルティガベースのツアーM、そしてワゴンRベースのツアーH3、アルトベースのツアーH1がタクシーなど旅客運送事業向け車両としてラインアップされている。ただ、つい最近インドの首都デリーへ出かけた時に利用したライドシェア会社の車両では、専用車以外にもディザイアやワゴンR、Sプレッソなど個人ユーザー向け車両も使われていたので、厳密にスズキならツアーシリーズ以外を旅客運送事業に使ってはいけないというわけでもないようであった。
さて、インドではツアーSのように旅客運送事業向け車両として、ベース車両があってもあえて別車名を与えている。筆者の経験ではインドネシアでも、たとえばトヨタの新興国向けコンパクトセダンの“ヴィオス”ベースのタクシー車両には“リモ”という車名が与えられているし、アヴァンザというMPVベースのタクシー車両には“トランスムーバー”という別車名が与えられている。たとえばヴィオスという車名のままタクシーで使われていると、「タクシーでも使われている」として、一般乗用車としてのヴィオスの売れ行きに悪影響を与えてしまうのであえて別車名を与えていると聞いたことがある。
同じインドネシアでホンダは現地で販売しているコンパクトMPVとなる“モビリオ”を車名そのままにタクシー車両としても販売している。そのため、一般乗用車としてのモビリオの販売状況に少なからず悪影響を与えたとも聞いている。インドでも同様の配慮から、マルチ・スズキは別車名を与えたのかもしれないが、実際は一般販売向け乗用車も少なくともライドシェア車両としては使われているので、あまりその配慮は効果をなしていないのかもしれない。