欧州プレミアムカーブランドが認めた実力を確かめに韓国へ! ネクセンタイヤが狙う「さらに先の世界」とは (2/2ページ)

ヨーロッパ系とアメリカ系の両方の強みを手に入れた

 オフィスツアーが終わると、さっそく森田氏からネクセンタイヤの立ち位置と強みをうかがうことができた。森田氏によれば、世界のタイヤメーカーには大きく分けてふたつの流れがあり、ひとつがミシュランやコンチネンタルといった「ヨーロッパ系」で、もうひとつはグッドイヤーやファイアストンなどの「アメリカ系」だ。それぞれに強みがあり、ヨーロッパ系は優れた構造設計と高い性能を生む生産力。一方、アメリカ系は材料の開発力と生産性の高さ。異なる強みを持つふたつの流れが同じ舞台で戦っているというのだ。

 日本のブリヂストンや韓国のハンコック、クムホがアメリカ系であるのに対して、前述のとおりネクセンタイヤは過去にミシュランと技術提携生産を行ったこともあって、ヨーロッパ系の流れを汲む。トレッドゴムに含まれる「シリカ」の量がタイヤのウエット性能を左右するといわれるが、ネクセンタイヤでは、「インターメッシュ型」のミキサーを用いることで、より多くのシリカを混ぜ込むことに成功しているのもヨーロッパ系と同じである。ミシュランに似た乗り味と評されるネクセンタイヤは、タイヤづくりそのものも、日本や韓国のブランドと根本的に違っているのだ。

 そんなネクセンタイヤの開発部門に、日本のブリヂストンでタイヤ材料の研究開発に取り組んできた森田氏が加わった。これが意味するのは、ネクセンタイヤがヨーロッパ系とアメリカ系の強みを併せもつ立ち位置を手に入れたということだ。さらに、世界最先端の設備を誇る工場を有し、高品質な商品を効率的に生み出すネクセンタイヤが今後さらに存在感を増す可能性は高い。

 商品の進化とともに取り組むのがブランド力の強化だ。クルマと違って試乗が難しいタイヤを購入してもらうには、商品力だけでなく、ブランド力を高めることが必要と考えるネクセンタイヤは、プレミアムカーブランドの新車装着、モータースポーツでの活躍、自動車専門誌のタイヤテストでの高い評価を重視しているという。

 実際、同社はいち早くスポーツカーブランドのポルシェの新車装着タイヤとして認められ、いまや世界で20以上のブランドにタイヤを供給している。その新車装着タイヤとほぼ同じクオリティのタイヤがアフターマーケットで手に入るのもネクセンタイヤの魅力。しかも、バス用やトラック用は扱わず、乗用車タイヤに特化したり、効率的な生産によりコストを抑えることで、ライバルよりも手頃な価格で優れた商品が手に入るのもうれしいところだ。

「生産規模を拡大するよりも、ブランド力を上げることがわれわれには重要」と話す森田氏。「ギターの分野でギブソンやマーチンを打ち負かしたテイラーのように、飽和したマーケットでも工夫次第でブランド力を上げることは可能です」。そのために挑戦の手を緩めない森田氏とネクセンタイヤ。日本市場に向けては、人気のオールシーズンタイヤ「エヌブルーフォーシーズン」の第二世代を2024年に投入したい考えで、「この会社にいるうちに、日本のGT300クラスに挑戦したいですね」という森田氏の“野望”とともに、今後の彼らの躍進に期待したい。


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