この記事をまとめると
■トヨタはガルウィング(バタフライ)ドアを持った「セラ」という車種を販売していた
■第27回東京モーターショーに参考出展された「AXV-II」というコンセプトカーがベースだ
■5年半ほどで1.6万台弱を売り上げる健闘を見せた
硬派なイメージのトヨタが手がけたぶっ飛びモデル!
よく“トヨタのクルマは退屈なクルマばかり”と訳知り顔で語る人がいるが、じつはトヨタほどチャレンジングなモデルを世に送り出しているメーカーは少ないとも言えるのだ。その代表格とも言えるのが、1990年に販売がスタートした「セラ」であろう。
源流となったのは1987年の第27回東京モーターショーに参考出展された「AXV-II」というモデルであり、当時のトヨタの若いデザイナーたちが自由な発想で作りあげた、あくまでもコンセプトカーというものだった。その特徴は何といっても昆虫が羽根を広げたかのようなスタイルを持つポップアップドアと、ほぼすべてがガラスで構成されるリヤハッチによって生み出されるルーミーなキャノピーだった。
当初はコンセプトカーとしてその役目を終えるはずだったAXV-IIだが、ショーでの反響が大きかったことで市販化への検討がスタート。1989年の東京モーターショーでは各部を現実的なものへとリファインし、セラという名前が付けられた市販前提モデルが展示されることになったのである。
ただ、AXV-IIの特徴でもあったポップアップドアとリヤのパノラミックハッチはほぼそのまま残されており、まさにコンセプトカーがそのまま市販化されたと言っても過言ではないエキセントリックな1台となっていたのだ。
なお、この特徴的なドアはフロント側にヒンジをもっているために厳密にはガルウィングドアではなく、“バタフライウイングドア“であるなどの論争もあるが、当時のカタログにもガルウィングドアという記載があるため、どちらでも間違いではないと言えるだろう。
このように非常に凝った作りとなっていたセラではあるが、基本コンポーネンツを同社のコンパクトカーであるスターレットと共有することでメカニズム的なコストを抑え、新車価格は160万円台からという低価格を実現。
ルーミーなガラスを多用したスタイルで車両重量が増加したこともあり、スターレットには存在しない1.5リッターガソリンエンジン仕様とはなっていたが、スターレット用のチューニングパーツが流用できるのもカスタマイズ派にはうれしいポイントとなっていた。
結局セラは5年半ほど販売が続けられ、総生産台数は1.6万台弱と大ヒットとまでは行かなかったが、かなりニッチなモデルであることを考えれば健闘したと言ってもよさそうだ。