エンジン車を保管しておいても走らせることができなくなる
さて、エンジン車がなくなると排ガスを出すクルマが消えるので大気汚染はずいぶんと改善することだろう。近年はNOx(窒素酸化物)など見えない大気汚染が問題となっているが、化石燃料を燃やさないのであればNOxが出るはずもないからだ。
ただし、ガソリンや軽油といった燃料を使わなくなるということは、ガソリン諸税と呼ばれる税収がなくなることを意味する。前述したようにEVのバッテリーを系統につないでバッファとして利用するとなれば、EVコンセントだけを別メーターにしてそこに課税するというのも難しい。
昨今、観測記事として「走行税」の新設が報道されることが増えているのは、政府がガソリン諸税に変わる徴税を考えているからに他ならない。
理屈としては、受益者負担として道路整備に当てるものとして走行税を新設するというのは納得してしまうかもしれないが、過去には道路を整備するためという名目だった「自動車重量税」が一般財源に組み入れられたこともある。走行税についても、そうなる可能性が高いことを考えると、単純に自動車ユーザーの負担を増やすだけといえそうだ。
ナンバー付きの保有車すべてがEVになった世界において、ガソリンの入手はどのようになるのだろうか。
世界的にEV化が進むと、原油のニーズが激減するため採掘量・流通量などは大幅に減るだろう。運用性を考えると、自衛隊の車両など一部は内燃機関が残る可能性があるが、一般人が化石燃料を入手することはかなり難しい状況になることは確実だ。
エンジン車を大事に保管しておいても、燃料が手に入らないために動かすことができないという時代になる可能性が高い。
それでもエンジンにこだわって保存しておくのか、パワートレインをEVにコンバージョンして電気で走るように改造するのか……、旧車趣味のトレンドも二分されることになりそうだ。