この記事をまとめると
■以前、免許証には本籍が記載されていた
■2010年の道路交通法改正で本籍欄は削除された
■警視庁によると、その理由は「プライバシー保護のため」
本籍は個人情報保護における機微情報
昨今の運転免許証に記載されている個人情報は、氏名・生年月日・現住所くらいとなっているが、一昔前までは本籍が記載されていたことを覚えている人はいるだろうか。
運転免許証から本籍地の記載がなくなったのは道路交通法の改正によるもので、その施行日は平成22年(2010年)7月17日だった。これはICカード免許証の普及に伴う変更だった。
はたして、本籍の記載をなくした理由について、警視庁のホームページによれば「プライバシー保護のため」と明記されている。
参考:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/menkyo_annai/ic.html
なぜ本籍が保護されるべきプライバシーになるのだろうか。そうした判断のガイドラインといえるのが「機微(センシティブ)情報」と呼ばれるものだ。そのなかには「門地(もんち)や本籍地」といった出自を連想させる要素も含まれている。
参考:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/sankou_01.pdf
残念ながら、本籍の住所によって不利なことが発生するというシチュエーションが完全にないとはいえないだけに、プライバシー保護の観点から運転免許証から本籍欄を削除するという判断に至ったといえるだろう。
とはいえ、本籍の住所については不変というわけではなく、役所に行けば割合カジュアルに変更することができる。
プロスポーツのファンが贔屓の球団の本拠地を本籍にするという話もあれば、日本でもっとも多く使われている本籍は「東京都千代田区千代田1番(皇居)」という話もあるくらいで、けっして出自にかかわる本籍の住所を維持する必要はない。
本籍のある役所でなければ戸籍謄本は取得できないので、その利便性を求めて現住所に本籍を動かすという判断もあるだろう。
なお、運転免許証に本籍欄がないとはいえ、ICチップには本籍のデータは入っている。本籍を変更した場合には、本籍の記載されている住民票を持って、運転免許証の記載事項変更手続を行う必要があるので注意したい。
余談だが、本籍を頻繁に変えていると亡くなった後に遺族が遺産相続をするのに必要な「除籍謄本」を取得する手間が増えてしまうというデメリットもある。
基本的に除籍謄本を得るには、被相続人が生まれたときから亡くなるまで本籍のあった役所に問い合わせる必要があり、その箇所が増えるごとに金銭的負担も大きくなるからだ。