トラックレースならではの装備が満載!
また、こう見えて空力パーツの開発もシビアに行われているといったら驚かれるでしょうか。レースごとに、フロントスポイラーやリヤエンドのカウルパーツなど、細かく変更されているそうです。これは市販車へのフィードバックが最大の目的で、長距離を走る実用車として、レースは願ってもないテストベンチなのでしょう。もっとも、スポイラーなどは接触すればたちまち壊れてなくなってしまうようですが(笑)。
レースをしているドライバーたちもまた、個性的なキャリアの持ち主が少なくありません。トラックレースからキャリアを積んだドライバーもいますが、イギリス人のジェイミー・アンダーソンは元ラリードライバーで、唯一の女性ドライバー、シュテフィ・ハルムはヨーロッパGT選手権で活躍していたなど、さまざまなジャンルからエキスパートたちが参入しているのです。そして、58歳とレーサーとしてはベテランクラスのルイス・ルクレンコが2019年に4勝をあげるなど、年齢層が厚いこともトラックレースならではでしょう。
トラックレースならではのテクニックをひとつをご紹介しておきましょう。さすがに5トンからの車重を受け止めるブレーキの過熱がシビアで、水を噴射して冷却する装置が全車に搭載されているそうです。が、1レースにつき100リットルまでしか使えません。ここぞというときに「噴射スイッチON!」(と叫ぶかどうかはわかりませんが)。ライバルよりコンマ1秒でもブレーキを遅らせて、アドバンテージを築こうというもの。あたかもF1でいうオーバーテイクボタンかのようですが、あちらは加速、トラックになると減速パワーというのが面白い対照かと。
意外なことに、トラックレースはかなりエコや持続可能性を追求しています。バイオフューエルのみというレギュレーションや、タイヤサプライヤーのグッドイヤーがこのレースのために「リトレッド技術」を提供するなど、こうした特徴からも「イロモノレース」から脱却していることがうかがえます。
2022年のリザルトを見ると、ヨーロッパで8カ国を転戦しているのがわかります。ニュルブルクリンクやハンガロリンクといったF1でおなじみのコースをはじめ、オールドファンには懐かしいハラマやゾルダーといったコースも名を連ね、さすがFIAらしく見ごたえあるサーキットをチョイスしています。
また、各国ともギャラリーは現役トラックドライバーが数多く訪れるらしく、駐車場は大型トラックで満車になることもしばしばだそう。やっぱり、レースを観戦した帰路ではカウンターあてるような熱いドライブになるのでしょうか(笑)。
ともあれ、日本では望むべくもないトラックレース、チャンスがあればぜひライブ観戦してみてはいかがでしょう。大迫力に必ずや胸打たれるものがあるはずです!