この記事をまとめると
■スズキ車がインドで愛される理由を解説
■スズキがインドに進出したのは80年代
■インドならではの販売の難しさにも丁寧に対応した結果、成功を収めた
マルチスズキはインドを代表する自動車ブランド
スズキはインドとのつながりが強い。または、スズキ車はインドでとても人気がある。そうした話は、さまざまなニュースを通じて、日本のユーザーでも知っている人が増えてきていると思う。実際、スズキがどれほどインドとの関係が深いのか? まずは販売の実績から見てみよう。
直近の期である、2021年4月から2022年3月までのスズキのグローバル販売台数は、270万7000台。このうち、インドは136.5万台となり、全体の50.4%を占めている。一方、日本は56.1万台であり、これはインドの半分にも満たない。
スズキとしても、まさかここまでインドでの台数が増えるとは、期待はあったにせよ、正確には予想できなかったのではないだろうか。
そもそも、スズキがインドに進出したのは80年代、日本でのインドのイメージといえば、タージマハルなどの観光地に代表される歴史的な建造物、または大自然の風景などを想像するにとどまっていたと思う。一方で、ビジネスの分野では日本とインドとのつながりは限定的だった。
そうしたなか、インド政府はインドの庶民が乗れる国民車構造を検討し、日本自動車メーカー各社に協力を打診した。その要望をスズキは受け入れ、インドのマルチ社と連携したマルチスズキとしてインドでの乗用車の製造と販売を始めた。
日本企業にとってインドは、未知の領域でありスズキとしてはリスクがある半面、将来に向けた大きなチャンスだと捉えていた。この時点で、インド政府はもとより、インドの多くの人たちにとって、異国の地に出向いてくれたスズキに対する感謝の気持ちが強かったと言えるだろう。
その後、スズキはインドの販売店やユーザーの声をひとつひとつ丁寧に聞くことで、インドで最適なクルマのあり方を考えていった。こうしたローカライゼーション(現地への最適化)は、自動車メーカー各社が欧米や中国市場向けにも当然行っている。
ところが、インドは都市部と地方部という大きな区分けではなく、隣接する地域それぞれで商慣習や生活に対する考え方が違うことも珍しくない。そのため、市場の声を商品やサービスにしっかりと組み込む作業には、多大な労力を要する。それを、スズキは一歩一歩、地道に積み上げていった。
結果的に、販売店とユーザーからマルチスズキはインドを代表するブランドであるとして、高い信頼を得ているのだ。
インドは今や日本を抜いて、中国、アメリカに次ぐ世界第三位の自動車消費国となった。人口でも2023年中に中国を抜いて、世界1位になることが確実視されている状況だ。まだまだこれから大きく成長するインド市場が、今後のスズキの世界事業を大きく後押しすることは間違いなさそうだ。