悪路を走らなくてもSUVは万能なクルマ
日本においては、90年代のミニバンブーム後、ミニバンの高い着座位置、視界に慣れてしまった自動車ユーザーが、家族構成の変化などで3列シートのミニバンが不要になったタイミングで、しかし背が低く、視界も低いクルマに乗り換えるのを躊躇した際、格好の選択肢として流行り始めのSUVに目が向いた……のも当時の印象であった。セダンでも、ワゴンでも、クーペでも、ミニバンでもない、ちょっと先をいく選択肢だったわけだ。だから流行に敏感なオシャレさんも飛びつくことになる。
乗用車ベースのSUVの魅力は、トヨタ・ハリアーなどに象徴されるように、立派な体躯、最低地上高の余裕と4WDによる走破性の高さ、ワゴン並みの荷物の積載性を持ちながら、乗って走り出せば、高級サルーンに匹敵する快適感を味わうことができるところにもある。マツダCX-3、トヨタ・ヤリスクロスのようなコンパクトなSUVなら、まるで扱いやすさ抜群のコンパクトカーを操る感覚で乗りこなすことができるのだ。今ではHVやPHEV、BEVの電動SUVが続々と登場し、SUVは大きく重く燃費が悪い……というかつてのネガティブイメージも払拭されつつある。
デメリットとしては立体駐車場に入りにくいことだが、都心でも新しい駐車場は平面置きが少なくなく、また、ミニバン経験者にとっては百も承知なデメリットと言っていい。
そして決定的だったのが、コロナ禍だ。リフレッシュしたい人たちは宿泊施設ではなく、人との接触が避けやすいアウトドア、キャンプに注目。その足としてもSUVはアウトドアフィールド、キャンプフィールドに似合う(ファッションとしても)格好のクルマなのである。
今ではこれから発売される三菱デリカミニ、スズキ・スペーシア ギア、スペーシア ベースといった軽自動車のSUVからFRベース、直6エンジン搭載のマツダCX-60、国産ハイエンドのレクサスLX、電気自動車のマツダMX-30、悪路にもめっぽう強いPHEVの三菱アウトランダーなど、国産SUVだけでも選び放題。
国産車では選択肢が限られてしまったセダン、ワゴンとは逆に、そんな、価格、サイズ、電動車を含むパワーユニット、デザイン性などを含む選択肢の多さもまた、SUVが支持され、人気が爆発している大きな理由になっているはずだ。くどいようだが、電動SUVを選べば、SUV=燃費が悪い……というSUVにまず思い浮かぶデメリットも感じずに済むのである。この時代にある意味、万能なクルマがSUVということだ。