いまでも「販売テリトリー」が存在する
ディーラー各店舗には、大昔ほどではないが「販売テリトリー」というものが存在する。いわゆるその店舗の販売担当地域のようなものである。飛び込み営業が当たり前の時代の名残ともいえるが、いまでも筆者が自宅から少々離れた場所のディーラーを訪れると、「なぜこの店にきたのですか?」とセールスマンはだいたい聞いてくる。
販売テリトリーはあくまでセールスマンが飛び込み営業を行うことを前提としたものとなり(いまは行わないが)、お客自らが自宅最寄りではない店舗を選んで新車を購入することについてテリトリーは問題ないが、念のため確認しているようである。ただ、同じディーラーの自宅最寄りの店舗と、自宅から離れた店舗で値引きの競り合いなどを行っていた場合は、いまでも自宅最寄り店舗に優先商談権があるものと聞いている。「自宅最寄りの店舗とだけ商談してください」と説明するだけでなく、要注意カスタマーのような扱いとなり、以降値引き条件の拡大は様子見のため停滞していくケースもあるので、「なぜ……」と聞かれたら、嘘はいけないが「近所の店舗は自宅からは行きにくい」とか、「こっちのほうによくくる」、「通勤途中に店がある」などと伝えておけばセールスマンも安心するはずだ。
要は「お客自らこの店舗を選んだ」という事実が欲しいのである。そうしないと場合によっては「テリ侵(テリトリー侵害)では?」などと、自社店舗同士で妙な勘ぐりをしてギスギスしたことにもなりかねないのである。
いまは、リアルでの商談の前にウェブサイト上でかなり詳細な見積りや、ローンシミュレーションもできるので、購入車種を絞り込み一店集中で新車購入するケースも目立っているし、今後はオンライン販売がいますぐではないが普及していくだろうから、隣近所で出店を集中させる必要もないと言えるのだが、これも最近ネットで話題の「トナラー(電車の座席がたくさん空いているのに、他意はないようだがわざわざ隣に座ってきたり、駐車場がガラガラなのにあえて隣にクルマを停めてくるような現象)」のような心理があるのかもしれない。