電動車でも退屈とは無縁! まるでランエボばりに振り回せる「三菱アウトランダーPHEV」と自在に曲がる「eKクロスEV」が楽し過ぎて笑う (2/2ページ)

ランエボのDNAが息づくアウトランダーPHEVの走り

 電動車は主に駆動/回生を電動モーターにより行う。その制御はコンピュータで緻密にコントロールされ、ガソリンエンジンやブレーキでは引き出せない微小なスリップコントロールが可能になる。

 たとえば発進加速シーン。ガソリンエンジンでアクセルを踏み過ぎると駆動輪が空転してしまう。車輪速センサーが空転を感知するとコンピューター制御でエンジンのスロットを絞るのだが、エンジンの出力制御はモーターほど緻密には行えない。減速時も同様で、ブレーキを強く踏み過ぎるとホイールロックを感知してABSがブレーキ液圧をリリースするのだが、ディスクブレーキとブレーキパッド間の摩擦力コントロールは極めてアナログな制御となっている。

 これをモーター駆動に置き換えると、駆動制御は電流量制御で連続的に行え、応答性も素早い。それを極微小な領域で連続的に行えば、さも自然に駆動力として引き出せることになる。減速回生制御も理屈は同じで、電流の緻密制御がドライバーのペダル操作を遥かに凌ぐ制動コントロールを行い、雪道とは思えないほどの制動力を発揮させるのである。

 アウトランダーPHEVで圧雪路のスラローム走行を行う。発進はスムースでホイールの空転を起こさない。パイロンに向けてステアリングを切り込むと、駆動モーターの駆動力配分が後輪寄りとなり、前輪は操舵応答性を高めてスムースなターンインができた。さらに切り返しではヨーレートを大きく引き出し向きを転換するため前後車輪の内輪にブレーキをかけるブレーキAYC(アクティブヨーコントロール)が作動し、スムースにライントレースして向きを変えてくれるのである。

 POWER、ECO、ノーマル、ターマック、グラベル、スノー、マッドとドライブモードはさまざまな路面コンディションに高度に適合するように用意されており、雪道ではスノーがもっとも適しているが、逆に圧雪路でターマックを使用したり、深雪ではマッドが適合したりと乗り味の変化を楽しむことも可能だ。

 アウトランダーPHEVは悪路走破性も高いSUVだが、雪道では縦横無尽なコントロール性に富んだ走りを堪能することができた。

 同じコースをeKクロスEVでも走ってみる。こちらはFFの2輪駆動だが、車体が小さく軽いのでフラットな雪上路面では舗装路と同様な発進性能が引き出せる。もちろん駆動モーターが微小領域の制御を自然に行っていることでドライバーは車輪の空転を意識することなく安心してステアリング操作に集中できるのだ。

 スラローム区間でステアリングを操舵するとモーターの駆動トルクが抑えられ旋回応答性を高める。ドライバーはハンドル操作だけで向きが変わるフィーリングでいるが、じつはモーターが旋回に適した駆動力制御を気付かれないように行っている。その結果、ライントレース性に優れ、EVの静かさとモータートルクの力強さで、軽自動車であることを意識させない質感の高い走りを実現していた。

 減速時の回生も同様で、ブレーキペダルを踏んでもモーター回生による制動Gが高まるのだが、イノベーティブペダルオペレーションモードスイッチを選択するとアクセルペダルだけで加速/減速制御が可能になる。アクセルをリリースする速度が速いと回生強度が高まり、雪上とは思えないほど強い制動Gが発揮される。イノベーティブペダルオペレーションモードは雪道でこそ、その真価が発揮できる装備だと認識させられた。それはアウトランダーPHEVにおいても同様だ。

 テスト走行のクライマックスとして、圧雪のワインディング路をアウトランダーPHEVで攻め込んだ。ここはWRCのラリーカーのテストでも使用されるグラベル路で、冬季は積雪によりフラットで状態のよい圧雪路となる。

 本来、アウトランダーPHEVのようなSUVが得意とするコースではないはずだが、アウトランダーPHEVはここで感動的な走りを体験させてくれた。

 ASC(アクティブスタビリティコントロール)機能をオフにし、ドライバーのスキルを最大限発揮できる状態にしてアタック開始。直線で加速させS字コーナー手前でスロットルオフにすると減速Gが高まり前輪荷重が増す。そこでステアリングを操舵しフェイントモーションを引き起こすとアウトランダーPHEVは見事なドリフト姿勢となり、コーナー出口に向けてアクセルオンすれば強大なトルクでゼロカウンターの4輪パワードリフト状態に持ち込めるのだ。

 とくにスノーやマッドのモードではASCオフ時にも後輪駆動寄りの駆動力配分となりアクセルでリヤスライド量をドライバーがコントロールできる。こうしたドライバー主体の走りを楽しめるのが三菱自動車4WDの魅力で、それは世界のラリーシーンを席巻したランサー・エボリューションの時代に培われたDNAそのものだった。

 電動車=環境性能という認識が多く浸透しているなかで、三菱自動車の電動車は走行特性もより緻密に制御し進化させているのだ、ということを改めて認識させられたのである。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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