わずか75馬力でついたあだ名は「Sem Potência」=非力
SPは試作も量産も当時のRRモデル「バリアント」をベースに、独自デザインの2ドア・ハッチバックボディを架装したもの。エンジンはおなじみ1700ccの空冷水平対向で、とりたててチューニングされることもなく、75馬力を発揮して、車重1135kgのSP2を最高速160km/hまで引っ張り上げたとされています。
とはいえ、このパフォーマンスは待ちかねていたファンには期待外れもいいところで、SPという名前は「Sem Potência」(ポルトガル語でwithout power、つまり力無し)の略ではないかと揶揄されっぱなし。たとえば、プーマはFRPボディを採用して同じくVWのフラット4を使いながらもはるかにスポーティな乗り味をもっていたわけで、いくらスタイリッシュで仕上がりのいいSP2といえども、大衆は「残念ベサメムーチョ」とうなだれがちだったのでしょう。
皮肉なことに、プロジェクトXと並行して進められていたカルマンギアのブラジル版「カルマンギアTC」も同時期に発売され、売り上げを食い合うということにもなり、SP2はますます肩身を狭くしていったのです。もちろん、てこ入れ策として「SP3」なる排気量をアップしたモデルも試作までいったのですが、こちらも鳴かず飛ばずに終わっています。
合計1万台ちょっとが作られた末、ディスコンとなってしまったSP2ですが、そのうち1000台弱はヨーロッパへ渡り、いまでも熱心なコレクターたちにかわいがられているそうです。パフォーマンスこそショボいものではあっても、VWの中では屈指のスタイリングとも評されていますから、まれにオークションなどに出品されると、意外なほどの高値が指されることもあるようです。
さらに、ブラジルではSP2のレストモッド(再解釈カスタム)も行われており、オーバーフェンダーや911風のダックテールなどを加えた「REBORN」なるモデルも登場しました。当時のショボさからは想像もつかないほどのカッコよさには、誰もが「なにこれビバ!」となること間違いないでしょう。