ホンダスポーツはNSX抜きには語れない!
しかしながら、NSX-Rの凄さは、運転すればすぐにわかる。ベース車の初期型5速MT車をかつて所有していた筆者としては、そちらも充分に素晴らしい走りだったが、NSX-Rには敵わない。
「速い、楽しい、とにかく気持ちいい!」
自動車ライターにあるまじき語彙力のなさで大変恐縮だが、NSX-Rを走らせたときの印象はこれに尽きる。いやむしろ、あまりに凄すぎるからこそ、語彙力を失わざるを得ないのだ。
絶大なスタビリティのなか、すべてが滑らかに動き、意のままに操れるため、運転を楽しむことに集中できる。そしてだからこそ、遥かに高いエンジンスペックや派手なスタイルを持つ、同時代同クラスのスーパースポーツカーと並んでも、状況によっては互角以上に速く走ることも不可能ではない。
ただし、その代償として、公道ではハードすぎる乗り心地や、パワートレインやタイヤなどからのけたたましいノイズに、常時苛まれることになる。だがそれすらもあばたもエクボ、大きな魅力の1つに感じられてしまうのだから面白い。とくに「ホンダミュージック」と形容できる、鋭く甲高く滑らかなエンジンサウンドは絶品だ。
そんなわかりにくい凄さこそがNSX、そしてNSX-Rが持つ最大の魅力であり、日本の匠たちが作り上げた、唯一無二のスーパースポーツカーたらしめている。
今や「価格応談」ですら中古車情報サイトに掲載されることが稀になり、財力があっても入手困難になってしまったNSX-R。現オーナーはもちろん、これから所有することになる並外れた幸運の持ち主にも、ぜひ一生手放さず、ガレージに眠らせたままにはせず、大事に乗り続けてほしいと願わずにはいられない。