カタログにない仕立てもオーダーメイドなら可能
英語のBe spokenが語源となるビスポークとなると、ワンオフよりもだいぶハードルが下がります。そもそもは、仕立屋と喋くりながら一着を仕立てたことからspokenが使われているそうですが、簡単に括ってしまうと、市販車を自分好みへとカスタムすること。
スーツでいえば襟の形がどうしたこうした、サイドベンツがなんちゃらといったやり取りであり、クルマの場合はいわゆるパーソナライゼーション・プログラムに当てはまるのかと。ボディカラーは何色で、インテリアと色合わせしてほしいとか、サスペンションはニュルブルクリンク向け、ECUはカリフォルニアの条例に合致させよ、なんてプログラムは、いまやフェラーリでもアストンマーティンでも当たり前のサービスとなっています。
次にオーダーメイドというのは和製英語で、あちらではカスタムオーダーというのが一般的。先のパーソナライゼーション・サービスより融通を利かせるというか、よりわがままな仕立てといっていいでしょう。つまり、既存のカスタムプログラムには存在しないようなオーダーというもので、カラーサンプルに載っていないカラーの指定や、NAエンジンにターボ付けてよ! なんて内容が当てはまるでしょう。
ちなみに、ポルシェやメルセデスベンツは昔からカスタマーカウンターでこうしたオーダーを受けており、さる自動車評論家がお気に入りのカシミアセーターの毛糸をサンプルに、ボディやインテリアのカラーをオーダーしたのは有名なエピソードです。パーソナライゼーション・サービスといっても組み合わせのサービスですから、確率は低くとも他人とかぶる可能性はゼロとはいえません。それを嫌ってたんまりとエクストラコストを積むわけですから、オーダーの醍醐味を極めるのはカスタムオーダーといっても過言ではないでしょう。
そして、最後にオートクチュールですが、この対義語はプレタポルテと聞けばなんとなくご理解いただけるかと。ざっくりいえば、高級婦人服と既製服ということで、クルマに当てはめると先のビスポークと一脈通じるもの。ただし、オートクチュールは訳せば高級婦人服ということでビスポークの男性的(背広の仕立屋)イメージよりも柔らかなニュアンス。よって、クルマの世界では登場する頻度が低いのではないでしょうか。
だいたいこれくらい分かっていれば、「カフェオレ人」くらいは煙に巻くことはできるかと思いますが、クルマ好きの口から「オートクチュール」とか出てくると確実に「キモっ!」てことになりかねません。せいぜい「あったかミルクコーヒーと呼んでどこが悪い」くらいがちょうどいいでしょう(笑)。