この記事をまとめると
■2022年11月、欧州委員会が「ユーロ7」に関する基本的な考え方を開示
■規制にはブレーキのダストやタイヤの粉塵も含めることが明らかとなった
■EV/FCVへの完全移行準備期間としての対応だと考えられる
将来的に実質EVとFCVのみにするという考え方
EURO(ユーロ)5とか、ユーロ6とか、「ユーロ〇」という表現を聞いたことがあるだろうか。ユーロとは欧州連合(EU)のことで、「ユーロ〇」とは欧州域内で規定されている自動車の排気ガス規制のことだ。
1992年に「ユーロ1」が基準化され、その後は段階的に排気ガス規制が厳しくなり、2014年から現在(2023年2月)までは「ユーロ6」が適用されている。
こうした欧州での排気ガス規制は、欧州域外でもインドなどさまざまな国で採用されている。経済新興国の場合、社会実情に合わせて未だに昔のユーロ規制の基準で対応していることが多い。
そんな欧州の排気ガス規制が、近年中に大きく変わることになりそうだ。欧州連合の執務機関である欧州委員会(EC)が2022年11月、「ユーロ7」に関する基本的な考え方を開示したのだ。
そこで明らかになったのは、ブレーキのダストやタイヤの粉塵も含めるというのだ。そうした考えになることは、自動車業界関係者の多くの想定内だったと思う。なぜならば、欧州委員会は近年、環境規制に関して「欧州グリーンディール政策」を強く打ち出だしており、その一環として「フィット・フォー・55」がある。
「フィット・フォー・55」とは、欧州域内での温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量を1990年比で2030年に少なくとも55%削減を達成するとしている。さらに、2035年に同100%削減が達成目標になっている。
この「温室効果ガス100%削減」によって、自動車ではZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)が必然となる。つまり、実質的にEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)のみという考え方だ。これを、乗用車と小型商用車の新車から規定する方針だ。
そうなれば、ハイブリッド車もプラグインハイブリッド車も欧州域内では事実上、販売できなくなり、内燃機関の排気ガスはなくなってしまうことになる。つまり、排気ガス規制という考え方自体が成立しなくなってしまうのだ。
こうした状況にあって、2025年を目途に実施される予定の「ユーロ7」では、EV/FCVへの完全移行準備期間として、排気ガス以外での環境対応策を盛り込むことになったと言えるだろう。現在のところ、タイヤの粉塵などの計測や試験の方法等については定まっていない。
欧州経済委員会による、自動車関連技術や試験法などについての国際協調や基準化・標準化を話し合う、自動車基準調和世界フォーラム(通称WP29)で、ユーロ7への導入を見据えたさまざまな協議が今後、本格化することになる。
こうした欧州での環境規制の変化は、当然だが、日本市場にも直接的な影響が及ぶ。EVシフトによって、クルマの関するこれまでの常識が大きく変わりそうだ。