リサイクルが確立されていない水素タンク
一般的に、車検も定期点検もできるだけ安く上げたいのが消費者心理ではないだろうか。水素エンジンを使うことは、一見、ガソリンエンジンの流用で安上がりに脱二酸化炭素できそうな印象を与えるが、そもそもカーボンファイバーなど高価な材料で頑丈に作られる水素タンク自体の値段は高いし、あとの保守管理にも手間や費用がかかる。
水素タンクの使用期間は15年だ。タンクとバルブの再利用は禁じられている。安全確保のためだ。そしてタンクは粉砕するなどして廃棄する。カーボンファイバーを含んだ素材のリサイクルは確立されていない。
一方、鉛酸バッテリーはリサイクルが確立されており、リチウムイオンバッテリーは廃車後の残存価値があり、再利用がはじまっている。
水素は、究極のエネルギーなどといわれ、世界的に期待が高い。しかし、元素のなかでもっとも小さくて軽いため、扱いや活用は容易でない。そもそも、化合物として水や石油などに水素は含まれるが、水素単体で地球上に存在するわけでもない。
グリーン水素といっても、水を電気分解するのであれば、世界で数十億人が安全な水を使えずにいる実情を考えると、燃料確保のため水を使っていいのか? という疑問も残る。自然災害の甚大化で、干ばつなどによる水不足がすでに起きているのである。
そのうえ、水素を燃やせば大気汚染物質の窒素酸化物(NOx)を排出する。もし、排出量は多くないというなら、それは燃焼温度が低い証であり、馬力が出にくいことを意味する。