この記事をまとめると
■ゼロエミッションと言われる水素だが、実用化には問題が山積みだ
■水素タンクは使用期限があり検査が必要で、交換するには非常にコストがかかる
■水素は自然界に単体では存在せず、生成するには大量の水が必要になる
1個200万円ともいわれる非常に高価な水素タンク
水素エンジンにしても燃料電池にしても、脱二酸化炭素(CO2)のグリーン水素を使えば、ゼロエミッションだといわれる。また、水素エンジンなら、いまのエンジン車を継続的に活かせるという。だが、事はそうたやすくない。
水素エンジンでは、燃料タンクの代わりに水素タンクを車載する。その水素タンクは、70MPa(メガパスカル:約700気圧)の超高圧だ。我々の住む地上が1気圧だから、その700倍の高圧である。水深10mで水圧が1気圧あがると概算される。700気圧なら7000mの海底となり、深海魚の住む世界だ。それほど圧力の高い水素を安全に保管しなければならない。当然、タンク1本の価格も高額になる。一説によれば200万円ともいわれている。
なおかつ、水素タンクは、高圧ガス保安法によって定期検査が必要だ。製造日から最初は4年1カ月以内、それ以降は2年3カ月以内に検査を繰り返す必要がある。水素タンクは円筒形のため、車体から取り外して全体を検査するのが一般的だ。
高圧ガス保安法による検査期間と、クルマの定期点検をすり合わせると、1回目の車検が3年目なので、このときにまず初回の検査を行う。その後の車検は2年ごとに実施されるので、車検のたびに検査することになるのではないか。車検時期をはずして、高圧ガス保安法の定める時期ギリギリに検査をすることも不可能ではないが、車両からタンクを取り外したり、検査のためクルマを預けたりすることを考えると、定期点検の折に検査を繰り返すほうが安上がりになりそうだ。