この記事をまとめると
■テスラが車内エンターテイメントをより充実させると発表した
■世界中で人気が高いゲームシステム「Steam」を導入する予定としている
■「Steam」の導入によってテスラブランドに新たな価値が加わるのではと予想されている
テスラがゲームシステム「Steam」を車内へ導入
アメリカのテスラが、車内エンターテインメントをさらに充実させることになった。
PC(パーソナルコンピュータ)で人気のゲームシステム「Steam」が、車内ディスプレイを使って楽しめるようになるのだ。テスラのイーロン・マスクCEOは2022年7月、Steam導入に向けた開発を進めていることを明らかにしていて、それから約5カ月後にデモに関する動画などが公開された。まず、「モデルS」や「モデルX」から量産される模様だ。
こうしたニュースに世界が注目する理由は、「クルマの役割がこれから大きく変わるかもしれない」という意識を、人々が共有し始めているからではないだろうか。
すでに言い古された表現だと思うが、「自動車産業界は100年に一度の大変革期」に入っている。
技術的な観点では、ドイツのメルセデス・ベンツがマーケティング用語として使い、その後にメディアによって一般名詞のように扱われるようになったCASEが「100年に一度」の中核にいることは明らかだ。つまり、通信によるコネクテッド、自動運転、シェアリング等の新しいサービス、そしてEV(電気自動車)等の電動化である。
こうしたCASEの視点で考えると、たとえば自動運転のレベルが高くなると、運転の主体はクルマ側のシステムになり、ドライバーは運転の責任を負わなくなるため、車内で映画を鑑賞したりゲームを楽しむことが重視される……、という仮説が出てくることが多い。
そうした考え方は、「あり得る」とは思うが、これまで世界各地でCASE関連の取材をしてきた筆者の肌感覚をもとに改めて考えると、「少々こじつけ」という感じもする。
「自動運転になるから」「EVになるから」「通信が5Gになるから」、といった技術進化と、「ゲームなどのエンターテインメントを車内で楽しみたい」という「人の欲望」は、直接結びついているようには思えないからだ。
今の自動車メーカーで行われている「未来のクルマ」議論では、技術進化の成果の裏付けとして、車内エンターテインメントが位置付けられているように思えてならない。これは、テスラ側も同じような感覚でいるのではないだろうか。ただし、自動車産業界において後発企業であるテスラは、自動車産業界でのさまざまな「縛り」や「商慣習」にあまりとらわれない形で、経営や商品企画をこれまで進めてきた。
そうしたなかで、今回のSteam採用はテスラ社内で自然な流れとして話が進んでいったように思える。結果的に、今回のSteam採用を喜ぶユーザーが増え、テスラというブランドに新たなる価値が加わっていくのではないだろうか。