この記事をまとめると
■1999年にルノーが6430億円を出資してルノー日産アライアンスが始まった
■ルノーは約44%を所有している日産の株式を、15%を残して手放す
■手放した28.4%の株式は信託銀行に預けられ、ゆくゆくは日産が買い取ることが予想される
ルノーと日産の関係に変化の兆し
1999年に経営危機に陥った日産に、フランスのルノーが6430億円を出資してはじまったルノー日産アライアンスは、いまや自動車業界において当たり前の関係として捉えられているが、そのパワーバランスが大きく変わっていく発表があった。
それが、ルノーグループと日産の資本関係をリバランスするというものだ。
具体的には『日産とルノーグループは、ロックアップおよびスタンドスティル義務を伴う15%の株式を相互に保有。両社とも、同保有株に付随する議決権を15%まで自由に行使可能』とすることを発表している。ようは、互いに保有する株式は、同じだけの影響力であり、それを増やすことも減らすことも勝手にしないと取り決めたと理解できる。
これまでルノーグループは日産の発行済み株式の43.4%にあたる18億3183万7000株を有していた。そのうち15%を継続して保有するということは残り28.4%を手放すということになるが、その行先はフランスの信託会社であり、その株式に付随する議決権は中立的に行使されるという。言葉通りにとらえれば、信託会社は日産の経営には影響しないといえそうだ。
ただし、『ルノーが推薦する日産の取締役の選任または解任』については、信託会社はルノーの指示に従って議決権を行使すると発表されている。また、ルノーグループは信託した日産の株式のすべてに付随する経済面での権利(配当金と株式売却収入)を有するとされている。
過半数ではないがルノーグループと信託会社の合計で3分の1以上の株式を有しているのであるから、ルノーが経営陣を送り込むことができる状況であることは変わらない。配当金についても、2022年度の期末配当は5円と発表されているので、今期だけでも91億5918万5000円の配当金がルノーグループに流れることになる。
2022年11月に日産が発表した業績予想によれば、2022年3月期の当期純利益は1550億円であるので、純利益の6%近くがルノーグループに流れるというわけだ。
利益が出ていれば配当を出すというのは株式会社の宿命といえるので、あたかも日産の利益がルノーグループに吸い取られているように理解するのは適切とはいえないかもしれないが……。