タイヤによる差が如実に出たシリーズ唯一のスノーラリー
スタッドタイヤを使用するヨーロッパのスノーラリーに対して、日本のスノーラリーは基本的にスタッドレスタイヤを使用している。今大会のラリー・オブ・嬬恋も2WDモデルのみ、スタッドタイヤの装着が許されたものの、4WDモデルはスタッドタイヤの使用が禁止されていた。
そのため、4WD車両を投入する多くのエントラントはダンロップがラインアップするラリー競技用のスノータイヤを装着。これは圧雪路や深雪路などのスノー全般のほか、アイスにも対応するタイヤで、ラリー・オブ・嬬恋を制した鎌田によれば「ブロックで雪を掴んでくれるのでコントロールしやすい。ミラーバーンみたいな凍った路面では一般のスタッドレスタイヤがグリップすることもありますが、雪やシャーベットみたいなところだったら、圧倒的にラリースノータイヤがいい。コントロール性を考えても今回はラリースノータイヤの一択でした」とのことだ。
実際、ステージで見ていても鎌田は抜群のコントロールを披露。スピード感だけで言えば、スタッドタイヤを装着できるヨーロッパのスノーラリーからは見劣りするものの、それでも国内トップレベルにふさわしいテクニックをみることができただけに、なかなか楽しいものだった。
一方、ヨコハマは全日本ラリー選手権でスノーラリーがカレンダーから外れたことに合わせて、ラリー競技用スタッドレスタイヤの生産を終了している。そのため、ヨコハマタイヤの契約ドライバーである奴田原文雄は、トヨタGRヤリスに通常のスタッドレスタイヤを装着してJN2クラスに参戦していた。ドライバーのスキル的に見れば奴田原が優位に見えたのだが、やはり通常のスタッドレスタイヤではアンダーステアかつトラクション不足は明らかだった。おそらく本人にとってもストレスの溜まる一戦だったと思うが、それでも2位に入賞しただけに奴田原にとっては殊勲の表彰台と言えるだろう。
ちなみに前述のとおり、2WDモデルはラリー競技用のスタッドレスタイヤのほか、スタッドタイヤやチェーンの使用もOK。選択肢の多い状況となっていたのだが、大半のエントラントがスタッドタイヤを装着していたことから、2WDモデルとは言え、スノー路面でも鋭いブレーキングおよび素晴らしいトラクション性能を見せていた。
以上、全日本ラリー選手権唯一のスノーラリーについて、タイヤを中心にリポートしてきたが、もし、雪の量がもっと少なければ通常のスタッドレスタイヤがメインになっていたのかもしれないし、今年のWRC開幕戦、ラリー・モンテカルロのように完全なドライターマックであれば、オールウェザータイヤも選択肢のひとつになっていたのかもしれない。
そうやって考えると4WDモデルはスタッドタイヤが禁止されているとは言え、タイヤの選択肢は多く、コンディションに合わせてチョイスが可能。もちろん、エントラントにとっては負担が増えることから参加台数は少ないものの、タイヤの選択次第ではドラマチックな逆転劇が起こる可能性は高い。ヨーロッパに比べると国内のスノーラリーはスピード不足ではあるものの、それでもターマックやグラベルとはまた違った魅力的なラウンドとなっている。