MPVというカテゴリーに基準は存在しない
初代MPVは、エンジン縦置きのFRプラットフォームにV6エンジンを積んだ高級志向のモデル。3列シートではあるが、リヤドアはヒンジ式で、じつは初期の駆動方式はFRのみだった(のちに4WDが設定された)。
この初代マツダMPVは、1999年まで販売されるロングセラーモデルとなったが、それもあって日本でMPVはカテゴリー名として浸透しなかったという印象もある。MPVという表記が特定の車名を示しているのか、カテゴリーを指しているのか、文脈から理解しなくてはならないため、メディアでMPVという言葉が使いづらかったというのも影響しているだろう。
なお、マツダMPVは、1999年にスライドドアボディでFFプラットフォームベースの典型的なミニバンとして生まれ変わった。その後、2006年に3代目へと進化したが、2016年にはマツダがスライドドア車から撤退するということで生産終了になっている。
現在、MPVという表記を見かけることが多いのは欧州マーケットだ。
たとえばメルセデスはVクラスについてMPVというカテゴリー名で表現している。そして、欧州ではスライドドアの乗用車をMPVと称している印象が強い。
そのため、ルノー・カングーに代表される2列シートのスライドドア車もMPVにカテゴライズされているようだ。MPVは3列シート車の呼び名とはいえないのだ。
モヤモヤが残る結論で申し訳ないが、自動車のカテゴリー分けというのはマーケティング的であり、主観的であり、明確なルールは存在しない。
日本でいえば車検証に明記される車体の形状(箱型・幌型・ステーションワゴンなど)が、ほぼ唯一の公が認めた分類である。それ以外の、セダンやスポーツカー、ミニバンといったカテゴライズは業界やユーザーが勝手に呼んでいるだけといえる。
その意味では、自分が「このクルマはMPVである」と思えばMPVに分類すればいいだろう。もっとも、それが万人の共通認識とならないことは各人が自覚しておくべきだ。