この記事をまとめると
■かつてホンダにはバモスホンダという屋根もドアもないクルマがあった
■ファニーなルックスとは裏腹にメカニズムはTN III 360を流用し、性能は高かった
■2500台ほどしか売れなかったがリバイバルすれば人気が出るかもしれない
アウトドアブームのいまなら人気が出るかも!?
バモスという車名を聞くと、多くの人は軽のワンボックスワゴンであるあのモデルを思い浮かべることだろう。しかし、あのバモスは2代目モデルであり、初代モデルは1970年代に存在していたのである。
その初代バモス、正式名称を「バモスホンダ」といい、ホンダの名前が後ろに来る奇抜なものとなっているが、クルマとしても大変奇抜な1台となっていた。
なにせもっともベーシックなモデルでは屋根もなければドアもなく、なんならリヤシートも備わらないふたり乗り仕様という非常に尖った仕様だったのである。
幌付きの仕様も存在していたが、どちらにしてもドアは備わらなかったため、シート表皮は防水で、メーター類も防水タイプとなるなど、耐候性は最初から考えていない潔い作りとなっていた(そして一応ヒーターとデフロスターは標準装備されていた)。
ただ、乗員の重心位置よりも高い位置に保護用のガードパイプを備えたり、ロールバーを取り付けたり、前席にシートベルトを標準装備したりと、当時としては安全性に気を遣っていたようだが、いまの安全基準では市販することは叶わないといっても過言ではないだろう。
そんな尖ったバモスホンダではあるが、メカニズム的には当時の軽トラックであるTN III 360のものをそっくり流用しており、性能は折り紙つきだった。
いまみればレジャー用途に使われることを前提としていると思いがちであるが、当時は多目的な商用車としての使い方を考慮されており、警備や建設現場、農山林管理、牧場に工場内運搬など、比較的頻繁に乗り降りをするような用途に向けてはドアがないことがプラスに作用すると考えていたようだ。
とはいえさすがに尖り過ぎていたバモスホンダは、商業的に成功したとは言い難く、わずか3年ほどで絶版となり、その生産台数も2500台ほどと少数に留まってしまった。
当時は軽自動車といえども自動車自体がまだまだ高嶺の花だったことを考えると致し方ないところではあるが、もし近いコンセプトの車両がいま存在していたら、セカンドカーとしてスマッシュヒットを記録したかもしれない(ただ簡易的でも屋根とドアは欲しいところ)。