軽トラックが今後も生き残るかどうかはダイハツとスズキ次第
ちなみに2022年に新車として販売された軽トラックで、販売台数がもっとも多かった車種はハイゼットトラックで、9万142台に達した。1カ月平均ならば7512台になる。そこにOEM車のサンバートラックとピクシストラックを加えると、1カ月平均は8233台だ。
同じように、キャリイに、NT100クリッパー、スクラムトラック、ミニキャブトラックの販売台数を加えると、1カ月平均は5716台になる。
このOEM車を含めた販売台数を乗用車に当てはめると、ハイゼットトラック+OEM車は、スズキスペーシアの1カ月平均になる8351台に近い。キャリイ+OEM車は、スズキハスラーの5864台に近い。つまり、車種ごとの販売台数ではなく、OEM車を含めたボディタイプ別の生産台数で見ると、ハイゼットトラックやキャリイの台数は軽乗用車の人気車に相当する。
このように軽トラックがOEMを総動員して販売台数を増やす背景には、このカテゴリーの過酷な薄利多売がある。
ハイゼットトラックで価格がもっとも安いスタンダード(スマートアシスト非装着車/5速MT)の価格は90万2000円だ。この価格でも、装着が義務付けられる4輪ABS、横滑り防止装置、運転席と助手席のエアバッグなどは標準装着される。パワーステアリング、マニュアルエアコン、ラジオなども標準装着した。
キャリイで価格がもっとも安いKC(5速MT)は75万2400円だ。デュアルカメラブレーキサポート、パワーステアリング、エアコンなどを非装着としたが、義務化された横滑り防止装置や運転席と助手席のエアバッグなどは標準装着する。
販売店では「ここまで価格が安いと、1台当たりの粗利はきわめて少ない。車検や点検、保険などの取り扱いによって利益が生じている」と述べる。メーカーの商品企画担当者も「ほとんど儲からない商品だから、OEM車として販売していただいて、始めて成り立っている」という。
そうなると辛いのは、車両のOEM関係を持たないホンダで、アクティトラックとバンは生産を終えた。現在扱われているN-VANは、大量に売られるN-BOXと基本部分を共通化したから(相違点も少なくないが)成り立っている。
このように軽トラックは、必要不可欠のクルマだが、ほとんど儲からない。日本の物流を支えるメーカーや販売店の心意気で成り立つ商品ともいえるだろう。それだけにクルマ好きにとっても愛しい存在で、多くのユーザーが高い関心を寄せている。