まだまだ道の過程と言えそうだ
ヘリテージと新しさの融合
その点、「変革」を謳うトナーレには新しいアプローチが感じられます。たとえば、フロントの特徴的な3連のU字形デイタイムランニングライトは、1989年に登場したザガートによる「SZ」から着想を得たそう。ここで肝心なのは、単に片側3つのランプがSZに似ているということではなく、中央の楯型グリルと横一文字につながったフロントフェイス全体に新しさがある点です。
現行のジュリアや「ステルヴィオ」では、ランプと楯の関係がいまひとつ中途半端でしたが、これを一体とすることで強い個性を出しながら、同時にコンパクトに見せることに成功しています。
また、サイド面では、往年の「ジュリアGT」を想起させる、シンプルで官能的なショルダーラインが特徴と謳われています。前後に向けて緩やかに下るショルダーラインと、これに沿うドア面のプレスラインです。
ここも、単にショルダーラインの形状だけでなく、これによってボディの下半身全体が緩やかな山形となり、そこに比較的シャープなキャビンが載るという「2段構造」になっているのが見所です。
上級のステルヴィオは、その大きさを生かして優雅なウエーブ状のショルダーラインを描いていますが、全長4530mmのミディアムボディであるトナーレは、前後を下げて張りのあるボディとしたことが巧妙です。とりわけ、フロントのフード先端はかなり下げられていて、低く構えた「顔」は、SUVというよりセダンかコンパクトハッチのような佇まいです。
これからの展開こそが楽しみ
多くのライバルと同様、トナーレも一見オーソドックスなSUVシルエットであり、ボディの構成に革新的な特徴を持っているわけではありません。それでも、過去の名車の特徴を現代的に解釈したユニークな要素を積極的に盛り込んでおり、結果として凝縮感のある独特なスタイルを生み出しました。
つまり、トナーレは次の新しいアルファ・デザインへようやく踏み出したところであり、まさにいま「絶賛整え中」と言えるのです。