あえて空気の流れを乱すことで空力性能が改善される
さて、最近のクルマで見られるエアロ・スタビライジング・フィン(トヨタ)やシェブロン(ホンダ)といった空力特性を改善する小突起状の空力付加物だが、じつはこれらはボルテックス・ジェネレーター(渦流発生器)と呼ばれるものに区分され、意図的に空気の流れを乱すことで空力特性の改善を図るアイテムである。
空力特性の改善は、可能な限り空気流をスムースにすることだと捉えられてきた従来の考え方からすると、意図的に空気の流れを乱すことが空力を改善するとはどういうことか、と混乱しがちだが、これは空気流の解析が進んだことによって実用化された、いわば理詰めのパーツといってよいものである。
車体リヤエンドやボディ形状によっては、ルーフ後端あるいはウイング支持側板、場合によってサイドミラーなど、空気流が剥離を起こす部分に小さな突起(ボルテックス・ジェネレーター)を設けて空気流を小さく乱すことで、その後ろにできる大きな渦の発生を抑え、その結果として空力特性の改善を図った空力パーツである。
空気抵抗は、速度の2乗に比例して大きくなるため、超高速域では車両性能に決定的な影響を及ぼすが、100km/h以下のスピード域でもその効果が確認される空力パーツも少なくなく、小さな突起物の装着で改善を図ることができるボルテックス・ジェネレーターの発想は、理にかなったもので、うれしいことにコストパフォーマンスにも優れた空力改善パーツということができる。
本来、空力特性の改善は、空気の流れををよくするためと信じ込まれてきたが、その逆で、ボルテックス・ジェネレーターは、意図的に空気流を乱すことで空力特性の改善につながる興味深い空力パーツといえるだろう。