いまハイブリッド車の人気は分散している
プリウスの使命を考えれば、4代目で25年の歴史に幕をおろす方法もあったが、認知度が高く廃止するには惜しい。そこでプリウスは第2段階に入り、存続させることになった。
それが5代目で、プリウスをハイブリッドの象徴に位置付けるスペシャルティカーだ。フロントウインドウとリヤゲートを寝かせるプリウスの伝統的なデザインを昇華させ、全高は40mm下げて5ドアクーペとした。
2リッターエンジンも加えて、動力性能を向上させている。従来のプリウスは燃費を重視したが、今はWLTCモード燃費が36km/Lに達するヤリスハイブリッドXも用意される。もはやプリウスに燃費スペシャル的なグレードを用意する必要はなく、むしろモーター駆動による瞬発力、加速の滑らかさ、優れた静粛性など、燃費よりもハイブリッドの付加価値に磨きを掛けた。
従来のプリウスはハイブリッドの特徴とされる低燃費を追求したが、新型はハイブリッドシステムの可能性を表現している。そのために動力性能の高い2リッターエンジンを用意して、低重心化により走行性能を総合的に向上させた。
このようなプリウスの変化を販売店ではどのように見ているのか。またプリウスの売れ行きが下がった代わりに、どのような車種が売れているのか。この点を尋ねた。
「プリウスの需要は根強く、先代型、現行型ともに、従来のプリウスから乗り継ぐお客様は多い。売却額も比較的高いから、従来型を下取りに出して、新車のプリウスを購入される。その一方でプリウスはサイズが少し大きな3ナンバー車だから、ダウンサイジングされるお客様は、ヤリス、ヤリスクロス、アクアなどのハイブリッドに乗り替える。また今はカローラクロスやヴォクシーにもハイブリッドがあるから、好みに応じて選べる。以前はハイブリッドの需要がプリウスに集中していたが、今は分散されている」。
ちなみにハイブリッドとノーマルエンジン車の価格差は、以前は40万円を超えることも多かったが、今のトヨタ車では、売れ筋グレードを35万円に抑えることが多い。ハイブリッドが以前よりも割安になった。価格差が35万円のノア&ヴォクシー、シエンタ、カローラクロスなどは、ノーマルエンジンよりもハイブリッドが多く販売されている。従来のプリウスのユーザーも、これらのハイブリッド比率が高いトヨタ車に乗り替えたわけだ。