この記事をまとめると
■海外でしか販売されていない日本車がある
■そのなかには日本で製造したのちに輸出されているモデルも
■欲しいという声があがることもあるが、なぜ日本では売られないのだろうか?
日本車であっても輸出先の法規や排気ガス規制に対応している
逆輸入車(ぎゃくゆにゅうしゃ)という表現がある。なにがどう逆かと言えば、日本で生産して海外に輸出した日本車を、また日本に輸入することを「逆輸入」と呼んでいるのだ。
逆輸入は、自動車メーカーや新車の正規販売店などが行うことは基本的にない。主として中古車事業者が海外から並行輸入することを指す。なぜ、こうした逆輸入が起こるのか?
それは、日本で販売されていない海外向けの日本車に魅力を感じて、海外で購入するより割高になっても自分のもとに置いておきたいと思うユーザーが日本にいるからだ。
ならば、自動車メーカーがそうした海外向けの日本車を日本で販売すれば良いはず。だが、海外向けの日本車は各国の法規、排気ガス規制などに対応しているため、そのまま日本で販売することが難しい場合が少なくない。
もっともわかりやすいのは、左ハンドル車だ。逆輸入車を好む人のなかには、左ハンドルの日本車が欲しいという人もいる。また、日本では販売されていない日本ブランドに憧れて逆輸入車を望む人もいる。
具体的には、高級ブランドのインフィニティとアキュラだ。時代を少し遡れば、1980年代中盤にホンダが北米市場を最初のターゲットとして立ち上げたのが、ホンダをスポーティかつラグジュアリー化したアキュラだ。
アキュラというブランド企画が水面下で進んでいることを察知したトヨタと日産は、それぞれ高級ブランドの構築に向けた準備を進めた。とくに、トヨタについてはそのプロセスは極めて難しかったと、レクサスブランドを立ち上げたアメリカ人のひとりがのちに回想している。
こうして90年代には、3つの日系プレミアムブランドが揃い踏みとなり、2000年代以降はSUVを中心にモデルの多様化が進んだ。
そして、レクサスのみが日本導入となり、アキュラとインフィニティについてはホンダと日産のぞれぞれが日本導入を何度も検討するも、現在のところその実現には至っていないのが実状だ。
つまり、日本でのアキュラとインフィニティの需要は「なくはないが、さほど大きくない」というのが、ホンダと日産の判断なのだ。
その上で、アキュラについてはアメリカ生産が基本であり、逆輸入という考え方は当てはまらない。一方、インフィニティについては日本生産が主流であるため、欲しい人は逆輸入することになる。
いずれにしても、海外仕様の日本車が日本からの輸出に頼っていた時代は終わり、大きな需要があるアメリカ、中国、欧州などでは日本車の現地生産が主体となっており、逆輸入の対象になる日本車モデルは近年、ぐっと減っている。