もはや依存せずには成り立たない! いまどきのクルマは「電子制御技術」に支配されていた (2/2ページ)

クルマの商品価値を高める役割を果たしている

 まず、電子制御式燃料噴射システムだ。それまでの機械式燃料噴射装置は、燃料量計測(供給)はメータリングカムが行い、スロットル開度や気温、気圧、回転数変化などに対応する補正はできなかった。しかし各種情報の検知センサーを備え、電子回路がそれらからの入力情報を演算して最適な燃料量を導き出す電子制御式は、エンジンの運転状況に応じた最適な燃料量をシリンダー内に供給できるため、エンジンレスポンス、出力特性、トルク特性、燃費性能などが良化し、キャブレター方式や機械式燃料噴射方式より「速いクルマ」に仕上げることが可能となった。

 駆動力伝達に関する電子制御方式の効果は絶大といってよい。日産のアテーサE-TS、ホンダのSH-AWD、三菱のS-AWCなど、それぞれ投入された時代で制御の実態は変わってくるが、4輪(または前後輪)に対して最適な駆動力を伝達するため、電子回路による駆動力制御を行うシステムである。物理的な入力によって機械的に反応するメカニカル制御では実現不可能な最適な駆動力伝達を、必要に応じて前後輪、さらには4輪独立で制御を可能にしたのは電子デバイスあっての話である。

 ABS、トラクションコントロール、車体姿勢制御装置なども電子制御なくして成立はあり得なかったシステムである。ABSやトラクションコントロール、あるいは車体姿勢制御システムが、なぜ速く走ることに関して有効なのかわかりにくいかもしれないが、それぞれ各システムの作動限界点を考えてみると理解しやすいだろう。

 ブレーキはロック寸前が最大制動力、駆動力伝達はエンジン出力によるホイールスピン寸前が最大値、姿勢制御装置はタイヤが滑り出す寸前が安定姿勢(グリップ状態)の限界状態と判断できるため、それぞれの限界状態をセンサーによって検知、この入力情報を電子制御回路が演算し、それぞれの機能を連続的に限界値付近で使用することが可能となる。

 おもしろいのは、マツダがロードスター用に開発したKPC(Kinematic Posture Control)システムだ。旋回中の車両姿勢を安定させるシステムで、基本は物理的なサスペンション・ジオメトリー(アンチリフト機能)を利用しながら、旋回中の後輪(駆動輪)左右の回転差を検出して内輪に制動力を発生させるシステムだ。姿勢安定装置(ESC)の機能を利用して旋回リヤ内輪にわずかな制動力を発生させ、旋回中の車両姿勢を安定させるシステムだ。機能としては、高速コーナリング時の姿勢安定効果が大きく、タイトなコーナリングは得意とするものの、高速コーナリングがあまり得意でないロードスターには、大きな安心材料となる姿勢制御方式である。

 自動車の電子制御は、安全性、環境性能の確保など、自動車が持つ社会性を有用に保ちながら、精緻にその動きを制御することで、結果的に走りの限界性能を高く保つことに成功し、そのことで自動車の商品価値を高める役割を果たしている。


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