カワイイクルマはコンセプトも独特
●5チャンネル体制下で生まれた実力派コンパクト
3台目は、オートザムの「レビュー」とします。バブル期のマツダによる5チャンネル体制下、「キャロル」に次ぐコンパクトカーとして、1990年にオートザムブランドから発売されたモデルです。
「ハイコンパクト2.5BOX」のキーワードにより、わずか3800mmの全長に1470mmの全高を持ったセダンボディは、コロっとしたプロポーションが「カワイさ」を感じさせます。同時に、楕円形のヘッドライトのフロントはオートザムらしいスマイルフェイスとされました。
見かけによらず、居住性などの高い機能性を携えたレビューは欧州市場などで人気を獲得しました。たしかに、実用性とカジュアルさを融合させたボディはかつての欧州コンパクト車を彷彿させます。その点、「カワイさ」ばかりがクローズアップされた国内は少々残念だったと言えそうです。
●トヨタの考えるクルマじゃないクルマ?
次は、トヨタの「WiLL Vi」です。1990年代の新しい消費スタイルを模索する、大手異業種5社による合同プロジェクトがWiLL。その第1段として2000年に登場となりました。
「ヴィッツ」をベースに「4ドアパーソナルカプセル」をキーワードとしたボディは、独特のクリフカットシルエットが特徴。まさに昔の馬車をイメージさせ、クルマとは思えない「カワイさ」を実現しました。「なごみ」がコンセプトのインテリアも、オレンジとブラウンの組み合わせがまるでスイーツのようです。
「Be-1」など、日産のパイクカーシリーズに比べるといまひとつ影が薄い印象のWiLLシリーズですが、従前のクルマらしさとかけ離れた新しさは間違いなく新鮮と言えそうです。
●原色が楽しいリアルチョロQ
最後は、スズキの「ツイン」。1999年の東京モーターショーに「Pu3コミュータ」の名前で出品されたコンセプトカーの市販版として、4年後の2003年に登場した2ドアマイクロクーペです。
ふたり乗りとして、わずか2735mmの全長に1450mmの全高としたプロポーションは、まさにチョロQそのもの。このボディの前後に大きな丸いライトを置いたのですから「カワイイ」のは当たり前で、青や赤、黄色と行った原色のボディカラーがオモチャ感を増幅しました。
ただよく見ると、未塗装のバンパーとホイールアーチはボリューム感に溢れ、小さなボディに安定感を与えています。さらに、左右非対称のグリルは欧州コンパクトカーを彷彿とさせ、単にカワイイだけのクルマじゃないところがユニークと言えます。
さて、一般的に「丸いライトのクルマはカワイイ」と思われていますが、今回の5台を見ると、同じ丸いライトでもクルマ全体としてはじつにさまざまな個性を発揮しているのがわかります。冒頭のように、最近はシャープな顔こそが「新しいデザイン」という風潮がありますが、もっと視野を広げたスタイリングを期待したいところです。