FRは縦置き、FFは横置きが定番!
さて、こうしてエンジン搭載位置と駆動方式の関係を振り返ってみると、スペース効率、動力伝達効率の視点から、エンジンの搭載方向(縦置き/横置き)が自然と決まっていることがよくわかる。整理してみると、もっともシンプルな構成がエンジン縦置きのFR方式となる。当然ながら、エンジン横置きのFR方式はあり得ない。動力の伝達方向を2度変換しなければならないからだ。逆に言えば、FR方式のエンジンレイアウトは縦置き以外はあり得ない、と言ってよいかもしれない。
逆に、このFR方式から車両のスペース効率(パッケージング効率)を追求していくと、エンジンを横置きにしたFF方式の優位性が浮かび上がってくる。大柄な車体サイズであれば、FR方式でも各部で必要になるスペースの確保に困ることもないが、ミニのサイズになると、エンジン横置きのFFである必然性が一目瞭然で伝わってくる。
では、エンジン縦置きのFFはあり得ないのかといえば、そんなことはない。かつてのアウディが直列エンジンを、そして現在もスバルが伝統的に水平対向エンジンを縦置きにしたFF方式(=4WD方式)を採用し続けている。エンジンは、その構造上、縦方向(クランク軸方向)が長くなり、エンジン縦置きFFの場合は、その分だけオーバーハング量が増え、フロントヘビーの傾向が強まってしまうが、スバルの場合は全長が短い水平対向4気筒を採用したことで、この分のデメリットを最小限にとどめている。
逆に、横置きにしてのエンジン搭載方法は、車体の横幅と関係するだけに、搭載可能な左右幅を確保した車両であれば、採用にあたってほとんど問題はないが、量産車のFF方式を考えると、フロントオーバーハング部への搭載となるだけに、大排気量の大型エンジンを搭載するには不向きである。珍しい例として、ホンダRA271F1(1.5リッターV12を横置き)やランボルギーニ・ミウラ(4リッターV12を横置き)があるが、いずれもミッドシップ方式で、量産車の車体前部に搭載する手法とは事情が異なっている。
縦置きか、横置きか、エンジン搭載方向によるメリット、デメリットは、搭載方向そのものではなく組み合わせる駆動方式と関係する問題で、駆動メカニズムやサスペンションメカニズムのシンプル化、重量バランスなど、重量物を車体に搭載するにあたって発生する問題に、どうやって対処するかにかかっている。実際のところ、FRはエンジン縦置き、FFはエンジン横置きとするのが定番であり、理にかなった方法である言えるだろう。