販売ランキング上位はスーパーハイトワゴンで占められている
それでもフィットが売れ行きを伸ばすのは難しい。フィットの標準タイプとされるノーマルエンジンを積んだホームの価格は182万6000円で、N-BOXに標準ボディを組み合わせたLは157万9600円だ。N-BOXの価格は約25万円安い。
フィットのスポーティグレードになるノーマルエンジンを積んだRSは195万9100円で、N-BOXにエアロパーツを装着した上級のカスタムLは178万9700円だ。これもN-BOXが約17万円安い。
以上のような価格で、車内の広さを比べると、N-BOXが広くシートアレンジも多彩だ。後席を畳むと自転車を積めて、スライドドアを備えるから乗降性も良い。
ただしフィットは、全長が4m前後で、全高を立体駐車場を使える高さに抑えたコンパクトカーでは、後席の居住性と積載性がもっとも優れている。加えて動力性能や走行安定性とのバランスは、N-BOXよりも優秀だ。
このようにフィットは魅力的なコンパクトカーで、商品力はN-BOXにも負けないが、販売面で対抗するのは難しい。その理由を販売店では以下のように説明した。「今はスライドドアを装着した背の高いコンパクトな車種を求めるお客様が増えた。このニーズに適しているのは、ホンダではN-BOXとフリードだ。フィットは合理的で価格も割安だが、背の高いボディにスライドドア、というニーズによって、売れ行きはN-BOXが上まわる」。
確かにN-BOXと併せてフリードの販売も好調だ。現行フリードの発売は2016年だから、2020年のフィットに比べると古いが、売れ行きでは上まわる。
さらにいえば、小型/普通車では、ルーミーが実質的な販売1位だ。統計上はヤリスが多いが、ヤリスクロスやGRヤリスの台数も含まれる。カローラも、セダン、ツーリング、スポーツ、継続生産型のアクシオとフィールダーまで含んだシリーズ全体の数字だ。ノートも3ナンバー車のノートオーラを含む。これらを分割して、ユーザーニーズに沿ってボディタイプ別に売れ行きを算出すると、ルーミーが1位になる。
そしてルーミーは、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着しており、いわばN-BOXの小型車版だ。このように国内販売ランキングの最上位は、スーパーハイトワゴンで占められる。フィットが売れない理由は根深いのだ。