この記事をまとめると
■ガソリンは時間が経つにつれて劣化する
■劣化したガソリンはクルマに悪影響を及ぼすことがある
■リスクや対処法について詳しく解説
エンジンの破損を招くことも!
気がついたら「これいつのガソリンだったっけ」と放置状態にされたガソリンの記憶はないだろうか? あまりクルマを使うことがなく最後の給油がいつだったか覚えがない、あるいはガレージの隅にある携行缶に残ったガソリンがいつのものだったかはっきりしない、などといったケースだ。
古くなったガソリンの存在に気が付いた際、不安になるのは、ガソリンは変質、劣化するのだろうか、そのまま使って影響はないのだろうか、といったことだろう。そこで、ガソリンの経時変化や経時劣化について調べてみることにした。
まず、ガソリンを長期間放置するとどうなるか、この点について調べてみた。ガソリンは、炭素と水素の化合物である炭化水素で、粘度や揮発性といった性状を持っている。このため、長期間放置すると、ガソリンに含まれるアルケン(オレフィン系炭化水素)が空気中の酸素と結びついて酸化を起こし、蟻酸や酢酸に変化を起こすことがある。酸化したガソリンは変色し、同時に刺激臭を発生するようになる。また、揮発成分が蒸発することでガソリンの粘度が上がり、本来持つ流れやすさ、流動性が悪化することになる。ガソリンの色が褐色に変化している場合、本来の臭いと異なる刺激臭を発している場合は、ガソリンが酸化、つまり劣化したと判断してよいだろう。
では、劣化したガソリンにはどんな特徴(弊害)があるのだろうか。やはり気になるのは酸化作用だが、酸化するとガソリンタンクや配管部、ガソリンと接する金属部を腐食させたり、燃料ポンプやキャプレター、インジェクターを詰まらせたり、揮発性の低下によるエンジンの始動不良や運転状態の不安定化などを引き起こすことが考えられ、最悪の場合、エンジンの破損を招く場合もあり得るのだ。
ガソリンを供給するメーカーによれば、ガソリンを保管する場合は温度変化の小さな冷暗所で6カ月程度と説明されているが、もちろん、この方法に従ったとしても、確実に6カ月間の品質保証が行われるものではない、とも付け加えている。要するに、もっと短い期間でも変質する可能性は十分あるし、いったん空気に触れたガソリンは、早々に消費してしまうことが望ましい、ということなのだ。
では、もしガソリンが劣化していた場合にはどうすればよいのか、ということになるが、ガソリンタンク内にある場合は、ドレンコックからすべて抜き取り、新しいガソリンを補給し直すことになる。抜き取ったガソリンは、ガソリンスタンドに持ち込めば引き取ってくれるはずだが(有料の場合もある)、最終的には産業廃棄物収集運搬処理業者に連絡すればそこで廃棄してもらえることになる。
問題は、ガソリンタンクからの抜き取り作業だが、自走が懸念される場合(たぶんこのケースが多い)には、メーカーの修理工場(=ディーラーの整備工場)に連絡し、善後策を相談するのが間違いのない方法だ。抜き取り作業自体は、ガソリンスタンドなどでも可能なはずだが、そこまで安全に、確実に移動できるか否かが問題となる。
仮に、確実にクルマを長期間(1年以上)使用しないことが分かっていれば、ガソリンを抜き取った状態でクルマを保管することが最良の選択肢と言えるだろう。逆の言い方をすれば、長期間動かさなかったクルマは、燃料、オイル(エンジン/ミッション/デフ)、冷却水などは、すべて新しいものと入れ替える、と考えておいてもよいだろう。