スピード感がシーズン9の魅力!
まず、全長、全高、全幅、ホイールベースの縮小が図られるなど、ディメンションの小型化が実施されたほか、それに合わせてマシンの最低重量も900kgから840kgに変更された。さらにモーターの最高出力も250kWから350kWに引き上げられたことで、最高速度も280km/hから320km/hオーバーとなるなど一気に拡大。つまり、マシンが大幅に速くなっているのだが、このスピード感がシーズン9の魅力だといえる。
そもそも電動フォーミュラカーを使用するフォーミュラEではエンジン搭載のフォーミュラカーと違って豪快なエンジンサウンドや官能的なエキゾーストサウンドはなく、モーター音とタイヤのスキル音しか響かないことから、迫力不足が多くのファンに指摘されていた。しかし、筆者がこれまでのフォーミュラEに対してネガティブに思っていた点は、サウンドではなく、スピード不足にあり、オンデマンドでの視聴でも、現地での観戦(2019年の香港)でも「遅いなー」というのが第一印象だった。
やがて、この遅いマシンが筆者のなかでフォーミュラEの代名詞となり、シリーズに対して興味を失うこととなったが、シーズン9の開幕戦のメキシコを見る限り、Gen3のスピード感は抜群だった。とくにレース中に4分間だけ使えるアタックモードはなかなか効果的で、パワフルな加速を武器に劇的なオーバーテイクを演出していた。
もちろん、Gen3でもレーシングカーとして心地よいサウンドはなく、ギャラリーの歓声が聞こえるほど、マシンは静かな状態だったが、レースはバトルさえあれば、そこそこ楽しめるものであり、“1/1ラジコンレース”としての魅力はあったように思う。
ちなみに筆者は2018年のパイクスピークインターナショナルヒルクライムレースで、フォルクスワーゲンが投入したEVレーシングカー「ID.Rパイクスピーク」を取材していたが、同マシンは静かながらも、そのスピードは異次元のレベルで、「爆音≠迫力」であり、「速さ=迫力」であることを改めて認識。その点から見てもGen3のフォーミュラEは面白いものだった。
加えてドライバーの顔ぶれも元F1ドライバーやWECドライバーなど充実したラインアップで、アンドレ・ロッテラーやサッシャ・フェネストラズ、ニック・キャシディなど日本でもおなじみのドライバーが参戦している。さらに2023年はインドやブラジルなど初開催のイベントが増えたほか、2024年には初めて日本の首都、東京での開催が発表されるなど身近なカテゴリーとなりつつあるだけに、2023年はフォーミュラEもチェックしたいものだ。