EVの普及に向けて日産がファクトリーでしていること
たとえばアリアで注目される技術のひとつに、希少金属を使わない巻き線式モーターがある。簡単にいえば、電磁石を利用することで永久磁石を省き、永久磁石の利用で不可欠な希少金属を不用とするモーターである。巻き線式モーターは、ほかにもアウディやメルセデス・ベンツで採用例がある。今後、世界的にEVが普及していけば、希少金属の資源にも限界が訪れる。そこで、基本的には鉄芯と銅線で構成される巻き線式モーターを有効活用することがひとつの解決策になる。EV販売で十数年の実績を持つ日産が、巻き線式モーターへの取り組みをはじめたことは、EV普及へ向けた本気度の表れでもある。
一方で巻き線式モーターは、鉄芯に銅線を巻き付けるのに最終的には人手を必要とする部分があり、生産性に課題があった。これを改善することで、巻き線式モーターの本格的量産につながることになる。日産インテリジェントファクトリーでは、その量産に取り組んでいるのである。
ほかにも、CASEへの対応、匠の技をロボットに伝承する最高品質での量産、ロボットを活かした働きやすい労働環境、脱二酸化炭素へ向けた完全電化と再生/代替エネルギーの全面適用など、数々の取り組みを行っている。それらを、受注を消化するための生産速度に高める取り組みを行っているため、大きな受注増につながる販売車種の拡充に時間を要しているようだ。
現在販売されているアリアのB6は、一充電走行距離がWLTCで470kmであり、通常の使い勝手では納得できる性能を備えている。もちろん、e-4ORCEと名付けられた電動4輪駆動のよさを味わいたいという期待は高いが、539万円でアリアの素のよさを体感することにも妙味がある。
もちろん、全車種が一日も早く揃うことが何より待たれる。その下地づくりが、いま日産の生産工場で営々と進められていることを応援したい。