デザイン性を損なわないドアハンドルの隠し方に脱帽!
3台目は、時代を先取る最高の技術や装備を与えられることが慣例となっている、メルセデス・ベンツ Sクラス。こちらも電動格納式の「シームレスドアハンドル」が採用されました。エッジを効かせたラインは極力廃し、豊かな面と「キャットウォーク」と呼ばれるごく繊細なラインで美しさとプレミアム感が表現されている新型Sクラスに、このドアハンドルはとてもよく合っていると感じます。
キーを持って近づくとせりだし、走行すると自動でまた格納されるというものです。メルセデス・ベンツは伝統的に、爪を長く伸ばしたり、ネイルをしている人でも気を使わずに握れるドアハンドルにこだわっていますが、シームレスドアハンドルになってもそれが貫かれているところがさすが。
室内でも、デジタルとアナログの調和というテーマがぴったりの、優雅でクリエイティブなインテリアや、対話型インフォテインメントシステムのMBUXが、各席の乗員の声を聞き分ける能力を持つことにもビックリです。
さて、ここで電動化された最新のドアハンドルではなく、アナログなんだけどまったく開け方がわからなくて困ったドアを持つクルマもご紹介しましょう。4台目はなんと、取材の際に3人がかりで探して30分もドアが開けられなかった、苦い思い出を持つTVR タスカンです。
イギリスで1950年代に創業したスポーツカー専門メーカーのTVRは、1990年代に入ってグリフィス、キミーラといったモデルが世界的に話題となり、日本でも2002年に正規代理店ができて販売されていたのです。タスカンはマッコウクジラのようなフロントマスクが個性的なデザインのスポーツカーで、2001年の映画「ソードフィッシュ」に登場して、ジョン・トラボルタが派手なカーアクションをしていたので記憶に残ってる人もいるかと思います。
このタスカン、ドアにはサイドミラーがニョキッと生えているだけで、あとは何にもありません。押しても引いても開けられず、どうなってるのかと探し回ったあげく、正解はサイドミラーの下にボタンがあり、それを押すとドアが開くというカラクリとなっていたのでした。「先に言ってよ……」と思ったものの、ちょっと誰かに話したくなるネタがあるところもまた、タスカンの魅力だったのかもしれないですね。ちなみにタスカンは4リッターの直6エンジンで350馬力のタスカン・スピード・シックスと、390馬力のタスカンSがありました。
5台目は、やはりアナログなドアハンドルだけど隠れたデザインになっていて、「どうやって開けるの?」とよく聞かれるクルマといえば、トヨタC-HR。SUVでも走りの良さにこだわり、ドイツのニュルブルクリンクサーキットでテスト走行を繰り返し、24時間レースにも参戦して腕試しをしたほど本気で作り込んだモデルです。
そのこだわりはデザインにも通じていて、開発者に聞いたところ、とくに凝ったのがドアハンドルという話。モダンでダイナミックなフォルムと、2ドアに見えるようリヤのドアハンドルを高い位置に配置して、隠すようにしています。ここまでなら、欧州コンパクトや日本のコンパクトカーなどでも一時はトレンドとなったデザインテクニックなのですが、C-HRの場合は使う人が開けにくいことのないように、フロントのドアハンドルと同じ操作方法で開閉できるように考慮されているのです。
少し小さめにはなりますが、たしかにフロントとリヤで横と縦の操作となると、混乱するかもしれないのでこれは親切ですね。
ということで、最新のものからアナログなものまで、一見すると開け方がわからないようなドアハンドルをご紹介しました。そのうち、ドアの前に立つだけで自動で開くヒンジドアが普通になって、ドアハンドルそのものがなくなる時代がやってくる……かもしれないですね。