「キア」のブランドイメージを高めるのに貢献するEV6 GT
注目すべきは800Vのシステムを採用したことによる充電時間の速さで、仮に800Vの急速充電器があれば、わずか18分で最大80%まで充電可能という高い充電能力の恩恵を受けることができる。本格的なBEV時代に向けて、それはかなり優秀なデータだ。
EV6 GTの走りは、ドライブモードの選択によってかなり明確にその印象を変える。用意されているモードは「エコ」、「ノーマル」、「スポーツ」、「GT」の4タイプ。その選択によって変化するのはモーターの制御だけではなく、ブレーキ、ステアリング、サスペンション、e-LSD、ESCなど多岐にわたり、さらにドライバーには各々を独立して調節できる「マイドライブ」モードも与えられる。
このGTの車重は2165kgとされるが、これはもちろん前で触れた専用プラットフォーム、E-GMPの恩恵が大きいと考えるのが妥当だろう。当然のことながらその加速は素晴らしく、とくにGTモードを選択したときにのみ発揮される585馬力でのフィーリングは(ノーマルとスポーツでは466馬力、エコでは292馬力にパワーは抑えられる)きわめてエキサイティングなもの。
同時にステアリングのレスポンスや正確さも一気に高まり、電子制御サスペンションシステムの巧みなダンピング制御とともに、常にフラットな乗り心地と俊敏な応答性を感じさせてくれるのだ。
もちろんどのモードを選択していても、アクセルペダルを一気に踏み込めば、そこからの加速はリヤタイヤがトラクションを得るのが難しいほど豪快なもの。しかもこのGTの標準装着タイヤは、ミシュランのパイロット4Sなのだから驚く。
今回試乗したモデルでは、日本円にして約1000万円のプライスタグが掲げられていたキアEV6 GT。これは現在までにキアが販売したモデルのなかではもっとも高価なレベルの一台となる。この新型BEVによって、キアはそのブランドイメージをさらに高めることは可能だろうか。個人的にはそのデザイン性やプレミアムブランドたるインテリアのフィニッシュ、そしてBEVとしてのパフォーマンスのいずれを考えても、それは可能なことではないかと思う。
我々がちょっと目を離していたわずかな時間に大幅な進化を遂げた韓国ブランドのBEV。日本のBEVがその遅れを取り返すには相当な努力が必要になるだろう。