軽自動車販売ならではの難しさも
N-BOXのトップというのは嬉しい反面、販売現場では深刻に受け止める声も多い。まずはN-BOXばかりが売れることになり、ほかの新型車の販売状況に少なからず悪影響を与えてしまっていることがある。とくにワリを食っているのがフィットとなるだろう。税制面で有利な軽自動車でしかもスーパーハイト系となるN-BOXでは、それだけでもフィットにはかなり不利に働いてしまう。
また300万円もあればもっともぜいたくなN-BOXが買えるということで、多人数乗車もそれほどしないからとステップワゴンあたりからの乗り換えも目立っているようである。つまりより高収益が期待できるクルマがなかなか売れにくくなるという弊害があるようだ。
また、軽自動車は納車後のアフターメンテナンスでなかなか利益を生んでくれないことがある。つまりディーラーでのメンテナンスを受けないというひとも多いのである。さらには、軽自動車ユーザーは軽自動車へ乗り換えるケースが圧倒的に多い。つまり、N-BOXを気に入って、その後ホンダユーザーを継続してもらえたとしても、ずっとN-BOXを乗り継ぐことになってしまうのである。
トヨタは子会社であるダイハツの軽自動車の一部を“ピクシスシリーズ”として、ダイハツからOEM(相手先ブランド)供給してもらい販売している。しかし、ピクシスを売ったとしても販売実績として判断しないなど、軽自動車販売へ偏った販売にならないように配慮している。また、かつてはスバル360のような名車といえる軽自動車をラインアップしていたスバルは、すでにかなり以前から自社での軽自動車開発をやめ、ダイハツからのOEMに切り換え、登録車開発に集中することで今日の世界的な成功を実現した一助になっているともいわれている。軽自動車販売はまさに“パンドラの箱”を開けることにもなるのである。
2022年12月単月の結果もN-BOXがトップとなっている。スズキとのブランド別での軽自動車販売を競争していたダイハツは見事2022暦年締めでも総合トップとなっている。その激しい闘いの爪痕をタントの2位が象徴しているように見える。
登録車のみでのランキングをみると、トップ10のうちトヨタ車が7車入っている。これは、長引く納車遅延の解消のためもあり、生産体制をかなり強化した結果といっていいだろう。事実トップ10に入っている7車中で、カローラシリーズやシエンタ、ノア&ヴォクシーなどは、従来より半年ほど納車予定が早まっているケースも確認できた。シエンタはバックオーダーを何台消化したかを表しているが、ライバルホンダ・フリードの販売台数は純粋な販売台数に近いと言っていいほど短い納期がランキングに大きな影響を与えているのは間違いない。
登録車ではカローラシリーズがトップとなっているが、これは2022年10月に改良を行ったセダン、ツーリング、スポーツの生産強化が行われた結果のようである。その一方で新規受注停止となっているカローラクロスの生産は完全に停まっていたとの情報も流れている。
2023年も残念ながら、新車販売の世界は深刻な納期遅延を引きずって年が明けている。生産が本格的に回復したとしても、納車まで1年近く待つ予定の新車はそう珍しくない。膨大なバックオーダーの消化を考えれば早期にいまの深刻な納期遅延が解消されることは望めないだろう。ただ希望的憶測も含め、暦年での後半。つまり10月あたりからは本格的な回復への道筋ぐらいは是非消費者に示して欲しいと考える次第である。