「限定要件」を考えることも重要
厚生労働省の資料によると、日本全体の人口は2010年代後半から2020年代頭がピークで、その後には減少していく。そのなかで年齢層では、14歳以下と65歳以上では縮小幅が限定的なのに対して、15歳から64歳までのいわゆる「生産人口」の縮小幅がとても大きい。
そのため、結果的に全人口に占める65歳以上人口の比率である高齢化率が今後、右肩上がりになっていくという流れだ。
一方で、警察庁の資料によると、運転免許人口分布は、自動車が大衆化した1960年代から70年代にかけて免許人口が急増し、80年代以降になると増加率は穏やかとなり近年ではほぼ横這いとなっている。
そのため、60年代から70年代に運転免許を取得した世代が近年、高齢ドライバーとなっており、その数は当面の間、増えていくことになる。
こうした高齢ドライバーの絶対数が増えるなかで、高齢ドライバーの事故が目立ってきたという考え方もできるのではないだろうか。
その上で、生活する上で運転を続ける必要がある高齢者も少なくないため、免許の更新、または免許返納という二者択一ではなく、運転を続けるために高齢者を支援する目的でさまざまな「限定要件」を考えることも重要だと思う。
限定要件としては、昼間のみとする時間帯限定や、自宅周辺の数キロとするエリア限定、また高速道路は運転しないことや同乗者がいる場合のみといった要件が考えられる。
実際、欧米ではそうした限定要件を実用化しているケースがある。日本では現在、サポカー限定という要件があるが、あまり普及していないのが実状だ。
時間帯限定などの導入については、取締りの観点からは対応が難しいことなど課題があるとは思うが、高齢ドライバー数の増加が確実な状況では、各種の限定要件の導入に向けた真剣な議論が必須であると思う。