この記事をまとめると
■ここ数年で登場しているクルマの多くはグレード毎に販売時期が異なる傾向にある
■半導体不足などによる納期遅延の影響で分けて生産したほうが効率がいいからだ
■先に出たモデルが結果的に遅く出たモデルより割高となった例も
クルマの販売時期がバラバラな理由とその弊害
クルマには、エンジンや装備に応じて複数のグレードが用意される。通常は、基本的に全グレードを同時に発売するが、今は時間差を設ける車種も増えた。
たとえば2022年に登場したシエンタは、Zについては発売時からすべて生産されていたが、ほかのグレードは違う。特定のオプション装備を加えたりすると生産開始が遅れた。クラウンクロスオーバーも「アドバンスト」の名称が付くグレードは早いが、それ以外は生産の開始が遅い。
このほかアリアも特別仕様車を先行発売して、一般のグレードはあとから投入する。レクサスRXは、ほかの車種に比べるとグレード数が少なく、ひとつのパワーユニットに1〜2グレードしか用意さていない。
なぜこのように時間差を設けてグレードを発売するのか。トヨタの開発者に尋ねると以下のように返答された。
「今は半導体を始めとして、各種のパーツやユニットの供給が滞っている。すべての仕様の生産を一斉に始めると、納期が全般的に遅れてしまう。そこで生産開始時期をわけている。納期の短縮を希望されるお客様には、生産開始時期の早いグレードを購入していただく。待つことができる場合は、自由に選んでいただく。このようにして納期遅延の対策を図っている」
RXの開発者も「納期の遅延に対応して、今回はグレードの選択肢を絞った」と述べた。
ただし、やり方に問題のある車種もある。たとえば新型フェアレディZは、2022年1月に特別仕様車のプロトスペックを発表した。価格は696万6300円で、この時点では一般グレードの価格は未定だった。価格が高いものの、申し込んだユーザーも少なくなかった。
その後にカタロググレードの内容と価格が明らかにされると、バージョンSTは、プロトスペックと色彩が部分的に異なる程度で、価格は約50万円安い。つまりこのときになって、先行発売されたプロトスペックが割高だったと判明した。しかもプロトスペックの納期がとくに早いわけでもないので、シエンタやクラウンクロスオーバーとは事情が異なる。
またマツダは、コロナ禍前からパワーユニットによって発売時期が異なっていた。たとえばマツダ3は、2019年5月に発売されたが、この時点でスカイアクティブXの燃費数値などは未定だった。その後、発売と併せて明らかにされている。
マツダにはこのパターンが多いが、燃費などのわからないグレードがあると、ユーザーは仕様を決めにくい。ほかのメーカーは、例外を除くとデータがそろってから発売するが、マツダは違う。このような時間差は、新型コロナウイルスではなく、メーカーの開発の都合によるものだ。