この記事をまとめると
■レクサスで唯一のミニバンである「LM」は中国のみで販売されている
■日本のレクサスではブランド戦略的にミニバンを扱う予定はないという
■元々予定がなかったSUVを導入した過去があるのでLMの導入もゼロではないだろう
売ろうと思えば売れそうなレクサスLMが未導入なワケ
トヨタの上級車ブランド、レクサスには、ミニバンのLMが用意されている。このモデル、中国では購入できるが、ミニバンの人気が高い日本国内では売られていない。
LMはアルファードをベースに開発され、3列シートの7人乗りに加えて2列シートの4人乗りもある。後者はアルファードには設定されないLM独自の豪華仕様だが、かつてアルファードとヴェルファイアに用意されていたモデリスタ製のロイヤルラウンジに近い。
アルファードはミニバンの人気車で、フルモデルチェンジを控えて生産を終える前の2021年には、コロナ禍ながら1カ月平均で約8000台を登録していた。小型/普通車の車名別販売ランキングでは、ヤリスシリーズ、ルーミー、カローラシリーズに次ぐ4位だった。売れ筋価格帯が400万円を超える車種では、圧倒的な1位になる。
アルファードはこのような人気車だから、レクサスLMを日本国内にも導入すれば、好調に売られると予想できる。それなのに国内では購入できない。その理由をレクサスの販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「レクサスの商品は、トヨタ車とは区分されている。パワーユニットやプラットフォームを共通化しても、ボディは異なる。その点でレクサスLMは、トヨタブランドのアルファードと共通点が多い。フロントマスクは異なるが、ボディの基本デザインは同じだ」。
別の店舗では異なる意見も聞けた。
「日本ではミニバンの人気が高く、LMを買いたいお客様が多い。販売店ではその期待に応えたいが、トヨタは対応していない。この背景にはブランド戦略がある。日本のミニバンは、高価格車でもファミリーカーで、レクサスの狙うプレミアムブランドとは違うのです」。
レクサスが北米で開業したのは1989年だが、日本は2005年であった。16年の差が生じた理由は、レクサスを導入する目的が異なるからだ。北米など海外におけるレクサスは、量販メーカーのトヨタが、高級車市場へ進出するためのブランドに位置付けられた。しかし日本では、トヨタの高級車市場を、メルセデス・ベンツやBMWから守ることが目的だ。
つまりトヨタのユーザーをメルセデス・ベンツやBMWに乗り替えさせず、なおかつ輸入車へ上級移行したトヨタの顧客を取り戻すためのブランドになる。
そうなると日本のレクサスは、商品構成をメルセデス・ベンツやBMWに近付たい。メルセデス・ベンツのミニバン、Vクラスが日本で販売を低迷させていることも踏まえて、LMを国内で売ることはないわけだ。
ただし2005年にレクサスが日本国内で開業したとき、トヨタ内部からは「レクサスではセダンとクーペ以外は扱わない」という話が聞かれた。それがSUVの人気が世界的に高まり、2009年になってRXを国内にも導入した経緯がある。レクサスの考え方も変化しているのだ。
それならLMを国内で扱う余地もあるだろう。トヨタとしては、所帯じみたミニバンは日本のレクサスには似合わないと考えているのだろうが、ユーザーが求めているなら素直に期待に応えれば良い。そこで築かれるブランドイメージこそ、日本のレクサスであるからだ。