新型イプシロンの登場で潮目は変わるのか
それが怪しくなったのは、1980年代後半から90年代初めにかけて、アルファとマセラティが相次いでフィアットグループ入りしてからだ。
プレミアムコンパクトのY〜イプシロン(初代のみアルファベット表記)は成功したものの、それ以外の車種は伸び悩み、21世紀に入ってフィアットがクライスラーと資本提携を結ぶと、ランチア・テーマをクライスラー300の双子車とするなどしたためにさらに低迷。イプシロン以外は生産中止となってしまった。
このままランチアは消滅してしまうのか。かつてYを所有していた僕を含め、多くのクルマ好きが将来を危惧していた。それだけに2022年11月のステランティスの発表は驚きだった。
ランチアの新しいロゴマークとともに、デザインコンセプト「Pu+Ra ZERO」(ピューラゼロ、Pure+Radicalの意味を持つ)を公開。2024年までに新型イプシロンを登場させるとともに、デルタを復活させるとアナウンスしたからだ。100%電動化を目指すという説明もあった。
取材で新旧さまざまなランチアに乗った経験から言えば、このブランドと電動化の相性はいいと思う。そもそも先進的な技術を売りとしていたブランドだし、エンジンに関しては半世紀以上自社開発はないのだから、イメージ的に合っている。
ではどういうブランドイメージを持たせるか。ステランティスでは「プログレッシブ・クラシック(進歩的な古典)」という言葉を掲げているようだが、個人的にはインテリジェンスを大切にしてほしいと考えている。
ストラトスやインテグラーレのようなスポーツモデルでさえ、ライバルと比べれば知性を感じるデザインやエンジニアリングだったし、アルファやマセラティとの棲み分けを図るには、この要素こそ大切だと思っている。
まずは来年と言われる新型イプシロンがどんな内容で現れるか、ルーツを愛車にしていたこともあるひとりとして楽しみに待ちたい。