この記事をまとめると
■クルマのOBDとは「車載式故障診断装置」のこと
■2024年10月からOBD車検が始まる
■OBD車検が実施される理由や内容について解説する
実施の理由はADASや自動運転技術の普及
2024年10月から、OBD車検が始まる。OBD車検とは、「自動車の電子的な検査」のことだ。クルマ好きや、自動車整備に詳しい人ならばOBD(オー・ビー・ディー)を知っていると思うが、一般ユーザーのなかには初めて聞いたという人が少なくないかもしれない。
OBDとは、「車載式故障診断装置(オン・ボード・ダイアグノーシス)」のことだ。現在販売されている自動車には、OBDに対応するための16ピンのOBDポートが装備されている。ここに専用のスキャンツールを接続すると、電子的な信号で感知でき得る部品や機能の故障について、故障コード(DTC)を読み取ることができる。
現在、新車販売店の整備施設はもちろんのこと、自動車修理を行う一般事業者でもOBDを利用した車両点検を行っているところが少なくない。
では、なぜこのタイミングでOBD車検が実施されることになったのか? 国土交通省によると、大きく2つの理由を挙げている。
ひとつは、いわゆる自動ブレーキである衝突被害軽減ブレーキといった、ADAS(高度運転者支援システム)や自動運転技術などが急速に進化して普及している状況で、こうしたシステムが故障した場合には、誤操作による重大事故につながりかねないこと。
もうひとつは、これまでの自動車の検査(車検)は、車両の外観をチェックしたり各種の測定器をつかった機能確認を行っているが、ADASや自動運転技術で使われている電子装置機能の確認には対応していないことだ。
見方をかえると、「ADASなどはこれまで、車検の対象外だったのか?」と驚く人がいるかもしれない。それほどまでに、ADASや近年での自動運転技術の進化のスピードが速いということが言えるだろう。
国土交通省は2017年12月4日に、「第1回 車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を実施し、2018年5月11日には中間とりまとめを、そして2019年3月13日に最終報告書を提示している。そのなかで、OBDを活用した自動車検査手法の流れを次のように記載している。
自動車メーカーは、故障コード読出に必要な技術情報(ECU情報)と、保安基準不適合の故障コード(特定DTC)を、独立行政法人 自動車技術総合機構に提出し、同機構が一括管理し全国の車検上や整備工場に提供する。
また、使用する法定スキャンツールの機能については、同機構が開発して無料配布する「特定DTC紹介アプリ」をインストールして作動させる。
検査車両の特定は、自動車車検証のQRコードや電子車検証で読み取る。
スキャンツールをOBDポートに接続して、故障コード(DTC)を読み出す。
そして、特定DTC照会アプリを使い、インターネットで同機能サーバに接続して、DTC情報の送信と判定結果の受信などを行うとしている。
その際、特定DTCを検出した場合、OBD車検は不合格となる。こうしたOBD車検は、ADASや自動運転技術のほか、排ガス関係装置についても対象となる。なお、輸入車については検査開始時期は2025年からとしている。