KINTOは納期が早いがデメリットも
このほか納期の長い車種として、トヨタでは「ノア&ヴォクシーはノーマルエンジンが9カ月、ハイブリッドは1年を要する。ハリアーハイブリッドとヤリスクロスハイブリッドも約1年で、クラウンも9カ月と長い」という。
とくに問題なのが新型プリウスで、販売店は以下のように述べた。「販売店では2022年12月22日から、プリウスの価格を明らかにして予約受注を開始した(予約受注開始日は販売店によって異なる)。受注は絶好調で、2022年内に、メーカーから与えられた2023年の生産枠を使い切る販売会社が出てくるかも知れない。そうなると正式発表される2023年1月10日には、受注を早くも停止する可能性がある」。
納期を縮める対策として、定額制カーリースのKINTOが挙げられる。ノア&ヴォクシーの納期は、前述のとおりノーマルエンジンが9カ月、ハイブリッドは1年だが、KINTOでは「契約後、1カ月半から2カ月で車両を届けられる」というからだ。KINTOを手掛ける販売店によると「新型プリウスもKINTO専用グレードの1.8Uを契約した場合、3カ月から4カ月で車両が届くと思う」とコメントした。
なぜKINTOは納期が早いのか。トヨタに尋ねると「車両の需給方法が(販売する車両とは)異なるから」としている。
ただしKINTOはカーリースだから、契約期間の満了後に、ユーザーが車両を買い取ることはできない。所有権を得て長く使いたい場合は、KINTOを利用できない。またKINTOには走行距離の規定もあり、これを超過すると、車両を返却する時に精算が発生してお金を支払う必要が生じる。
さらに盲導犬を含めて、動物の同乗もできず、ドレスアップやチューニングも認められていない。要は借りている車両だから制約が多い。
トヨタは、若年層の需要を掘り起こすことも含めて、KINTOに力を入れる。そこで納期遅延まで利用して、通常の販売よりも納期を短く抑え、KINTOのユーザーを募っているわけだ。
販売店からは「通常の販売では納期が1年に達する車種が、KINTOなら2カ月で納車できるのは不公平だ」という声も聞かれる。通常の買い方をしたいユーザーも同じ気持ちだろう。
ちなみにトヨタが日本のトップメーカーになった理由は、すべてのユーザーに、常に公平を心掛けてきたからだ。全国の大半の地域に販売網があり、故障の多かった時代に知らない場所へ出掛けても、トヨタ車なら安心だった。スターレットからクラウンまで、どこでも同じ水準のサービスを受けられた。この公平性が、KINTOを開始した最近のトヨタでは、損なわれ始めたように思える。