マフラーの交換によってクルマに不具合が出るケースも
このため、テールパイプは1本より2本、4本のほうが抵抗が小さくなり、よりスムースに排気ガスを排出することができるようになる。テールパイプ径も同様で、太くなれば抵抗が小さくなり、やはりスムースな排出効果が得られることになる。また、テールパイプ径が太くなることは、パイプ断面が大きくなることで周波数が下がり、低い排気音を響かせる効果もある。
では、テールパイプの本数は多く、パイプ径は太いほど排気効率に優れるかといえば、一概にそうとも言えない。排気ガスには脈動効果があり、燃焼ガスをリズムよく排出する働きのほかに、吸入気をシリンダー内に吸い入れる効果も持っている。そして、この排気の流れは、排気マニホールドの形状(結合方式なども含む)、長さ(排気ポートから第1フランジまで)によって特性が大きく左右される傾向がある。
市販車の排気系は、触媒、マフラー(サイレンサー)と排気の流れを妨げるデバイスが装着されているが、もっとも効率に優れた排気系は、これらを持たないストレートな排気システムである。かつてのレーシングカーを見ればよく分かるが、4気筒なら4-2-1、あるいは4-1結合、6気筒なら6-2-1、あるいは6-1結合の排気マニホールドに直接パイプをつなぐ排気システムが一般的だった。ただ、いくらサーキットレースとはいえこれでは爆音だという問題意識から、80年代に消音器(マフラー)の装着が義務づけとなった。
基本的には、排気系は抵抗を小さくすれば、その分だけ排気効率は向上すると考えてよいが、たとえばターボカーで過給圧をコンピューターで制御しているクルマの場合、マフラーを低背圧のものに換装するとコンピューターが正常に働かなくなるケースもある。
これはマフラーの換装に限った話ではないが、コンピューターによってエンジンが制御されている現行の車両で、エンジンの運転に関わる「何か」を交換しようとした場合、そのパーツが自分の車両(車両型式、エンジン型式、生産年など)に合致しているか否かを確認することが、まず最初の作業となる。交換作業はくれぐれも慎重に。