セールススタッフの異動は顧客ロストのリスクを伴う
担当セールススタッフがいなくなり、メカニックとだけ、点検とかメンテナンスのみの付き合いになると、そのお客は急速にその店舗からだけではなく、そのメーカー自体からも離れてしまうことが多い。つまり、いままでの良好な関係が一気に崩れ、顧客をロストするリスクがかなり高いので、ベテランセールススタッフの店舗間異動は極力行われないのである。
「もちろん、異動の際には後任のセールススタッフを紹介しますが、それだけでは店を離れてしまう抑止効果としては薄いですね。同じセールススタッフからクルマを乗り継ぐ人は、新車購入時のあらゆる面倒を省きたいという気持ちも大きいので、また新たなセールススタッフとの人間関係を構築していくことなどはその面倒に入るのです」(前出セールススタッフ)。
店舗異動したセールススタッフにとっても厳しい現実がある。居住地に近いとか、そもそも地元だったという地域への異動ならまだしも、あまり縁のない地域の店舗異動なら完全にアウェイ状態となり、地名すらも馴染みもないなか、新たに顧客開拓を行わなければならない。新人ならば「セールススタッフを始めて間もないので」と言いつくろうこともできるが、ベテランで営業担当地域の地名すら満足に理解していないなかで新車を売っていくのはなかなかきついものがあると聞いたことがある。
つまり、経験年次の長いセールススタッフを現役セールススタッフのまま店舗間異動させることは、かなり企業としてのディーラーにもリスクの高いことなのである。
ただ、現状ではどのディーラーでも働き手不足は深刻で、店舗スタッフはギリギリの人数で切り盛りしているのが現状。そのなかでベテランの離職者が出てしまい、残されるスタッフが経験年次の浅いセールススタッフばかりとなれば、ベテランは動かせないとも言っていられない状況にもなってきているようである。