昔からF1は実験室として多くの技術を輩出してきた
メルセデスAMGは最新のハイパーカー、AMG ONEにそれを搭載しているが、その目的は、おもにエレクトリック・モーターによるターボラグの解消にあるということだ。ちなみにMGU-Hの開発は非常に難しいが、メルセデスAMGは今後もその採用モデルの拡大を計画しているということだ。
1979年、マクラーレンが製作したMP4/1で採用したカーボンファイバーモノコックは、もはや現代のスーパーカーやハイパーカーでは珍しくない基本構造体だ。その特長はもちろん軽量で高剛性であること。
ちなみにマクラーレンのプロダクションモデルにおける最新のモノコックは、MCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャー)と呼ばれるもので、それはPHVシステムの搭載とともに大きな話題となった。
カーボンモノコックを使用するモデルは、価格的にもかなり高価なモデルになるが、実際に走りを体験してみればその効果が絶大であることは一目瞭然であるといってもよいだろう。
このモノコックやエンジンをカバーするボディも、F1マシンからさまざまなテクニックを応用している。2022年のレギュレーションでは、「シンプリフィケーション」、すなわち簡素化をキーワードに、ボディの下面でダウンフォースを得る、いわゆるグランド・エフェクトカーとしてのデザインが主流になったが、これは後続車が前走車による乱流を受けて安定性を損なう危険性を減少させるための策だった。
ロードモデルにおけるグランド・エフェクトカーといえば、フェラーリが360モデナでそれを採用した頃から他社もまたそれに追従するようになったが、今回、F1マシンが新たにその方向性を打ち出したことで、ボディ上面に多くの空力コンポーネントを持つモデルは徐々に減少していくのではないかという予想もある。
つまり、各社のデザイナーは、基本となるシルエットとボディ下面にいかに高速で(高圧で)エアを導入し、それを効率的に車体後方から抜き去るかに重点を置いたデザインを生み出す必要に迫られることになる。
これからのスーパーカー、ハイパーカーは、よりクリーンでスムースなデザインになると予想したいのだが、はたしてそれは正解だろうか。F1からの技術導入、そしてデザインへの影響。それはいつの時代も積極的に行われているのだ。