社会全体のあり方を考えていくべき
一方で、スイスでは2022年12月に入り、電力が不足して広域的な停電が起こるなどの緊急事態を想定した、各種の使用制限に関する草案が公表された。
それによると、制限は段階的に行われ、店舗での営業時間の短縮や、サーモスタットの温度設定の厳格化、エスカレーターの使用禁止などがあり、もっとも重い第三段階では不要不急のEVの使用も制限されるという。
スイスに限らず、欧州では現在、ロシアのウクライナ侵攻の影響によるエネルギー需給に関する大きな社会課題に直面しており、欧州の国や地域ではそれぞれでエネルギー政策を大幅に見直そうとしているところだ。
一方で、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)では、欧州グリーンディール政策の一環として、2035年までに欧州域内で販売する乗用車と小型商用車は(事実上)EVまたはFCV(燃料電池車)にする方針を示している。
こうした欧米でのEVに関する課題は、日本でも今後、起こり得るだろう。
一般論として、現在の新車販売台数のすべてがEVになっても、日本の電力は足りるという考え方を示す場合が多い。
ただし、それはあくまでも、安定した電力供給が行えると仮定した場合の机上論に過ぎない。
EV普及の主な目的は、地球環境の維持と改善とされているが、地球環境が今度、どのように変化するのかを高い確率で予想することは難しいだろう。
ロシアのウクライナ侵攻で世界中の人が実感しているように、世界の社会情勢がいつどのように大きく変わるのか、まったく予想できない。
そうしたなかで、日本でも今後、ガソリンであれ電力であり、自動車のエネルギー源については、これまで以上に社会全体のあり方を考える視点で、かつフレキシブルな対応ができるような体制づくりが望まれる。